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キャンプ



 私が標準と名付けているキャンプは、次の三つの部分から成り立っています。

  1 全体活動
  2 選択プログラム
  3 閑時作業 (Spare Time Activities)

 以下、それぞれについて説明を加えることにします。


1 全体活動

 参加者全員が一致して行動する活動のことです。設営、撤営、炊事、全体プログラム、セレモニーなどがあります。

 設営
 行動単位は班(5〜8人のグループ)です。班のサイト(テリトリー)を指定し、テントなどの資材、道具を配分した後は、一定の約束や許容の範囲で班に任せます。テントを始め、炊事用のかまど、食事・作業用テーブル、荷物置き場やもの干し場、雨天用の側溝やごみ穴、また門や囲いなどのデコレーション、必要があれば洗面所や洗濯場、水浴場、トイレなどを作り上げていきます。あーでもない、こーでもないと、試行錯誤をしながら、工夫しつつ、作業が進められます。
 班長のリーダーシップ、班員一人ひとりの技能が試される場になるわけです。
 後で述べる閑時作業の時間を活用して、メンテナンスや配置替えなどを行います。大雨が降って全面的に作り直しということもあります。いついつまでに設営完了ということはありません。撤営の号令がかかるまでは設営なのです。

 撤営
 撤営の号令がかかると、それまでの意識を180度転換させ、撤収、後片付けの行動に入ります。撤営のために半日は確保します。原状復帰が根本原則です。点検は成人リーダー総出でかなり厳しく行います。

 炊事
 献立の決定方法や買い出しについてはいろいろな方法がありますがここでは省略します。キャンプ場での炊事は、班単位で行うのが普通ですが、キャンプ場の都合や日程、プログラムの関係で、一括して行うこともあります。ここでは班単位で行う場合について述べます。
 器材、材料の配分の後は、班に任せます。炊事の作業のすべてについて、班のサイト内で完結することが原則です(水利の関係、施設の事情で原則通りにならない場合はあります)。水汲み、薪作り、かまどの火起こしと火力調整、調理、食卓や食器の準備、残飯処理や食器洗い、後片付けなどの役割分担や時間配分は班の自治で決めます。
 1時間ですべてを終えてしまう班もあれば、いつになっても火がつかない班もあります。大人の目から見て目に余る状況があれば、成人リーダーが介入します。

 全体プログラム
 キャンプファイヤーや長距離のハイキング、班対抗ゲーム、非常呼集(災害等想定訓練)など、全員参加によって効果のあるものについては全体プログラムとします。
 キャンプファイヤー(営火)は、誰にとっても印象が強く残るものであり、キャンプ全体で中心となる行事です。成人リーダーとして最も力を入れるプログラムです。進行と演出は大切な要素です。歌やゲーム、講話などを適度に折り込むわけですが、そこに大人の顔が現われることが重要です。大人が子ども達にメッセージを伝える絶好のチャンスでもあるわけです。

 セレモニー
 開村式、朝礼、ボーイスカウトに特有の進級式、閉村式などがあります。


2 選択プログラム

 プログラムのメニューとしては、ハイキング(追跡ハイク、宝探しハイク、夜間ハイク等)、パイオニアリング(ボーイスカウト特有のものですが、丸太やロープで塔や橋など、ドラム缶でいかだなどを作ったり、それらで遊ぶことです)、ビバーク体験、ゲーム(スカウトゲームやレクリエーションゲーム)、コンテスト(調理、火おこし、シェルター作り、測量、通信、パッキング等)、クラフト(紙飛行機、草笛、竹とんぼやかごなどの竹工作、木彫り工作等)、体験教室(現地の環境、資源にも依りますが、乗馬やアーチェリー、地元の人の協力を得て農作業や牛乳搾り体験等も)、通信教室(手旗、モールス、暗号、無線通信等)、天気予報教室(観天望気、気象通報で天気図書き等)、夜間教室(星座探し、天体観測等)、料理教室(ツイスト、野草料理、焼け石料理等)、ダンス教室(バンブーダンス等)、歌教室、スケッチ教室、地域探検(その地域の地形図を読みながら里山等探索、民家訪問、地図作り等)、地域奉仕(福祉施設の草取り等)、レクスポーツ(ペタンク、ソフトバレー等)、昆虫採集や植物採集、探鳥会、釣大会、水遊び、ドラム缶風呂体験、そのほか、アイデアはいくつでも浮かびます。

 参加単位は個人が原則です。どれに参加するかは個人で決めます。班には拘束されません。参加者には記録帳が渡されており、それぞれのプログラムに参加する毎に参加章としてシールまたはサインが貼付、記入されます。バッジ等の小物を贈呈という方法もあります。

 10分あれば終わってしまうものもあれば、数時間からまる一日を要するものもあります。数クールに分けた方がよいものもあります。これらのものを全日程にちりばめて実施するわけですが、日程の一日を選んで集中して実施した方がよいものもあります。また、どうしても人気不人気の差は出てきます。希望者が殺到するものもあれば、参加者を集めるのに工夫を要するものもあるでしょう。

 メニューは、成人リーダーの得意分野のものから一つ発案し、その人が責任を持って準備から実施まで受け持ちます。その道の専門家にお願いして、ボランティアとして参加していただき、受け持ってもらうこともあります。協力が得られる父兄に受け持ってもらうこともあります。協力していただける大人が多ければ多いほどプログラムは豊かになります。アシスタントが必要な場合は、参加者や手すきの成人リーダー等に呼びかけます。


3 閑時作業 (Spare Time Activities)

 炊事などの班の作業のない時間帯、全体プログラムや選択プログラムの実施されていない時間帯は、閑時作業の時間です。参加者が持っている記録帳には、「残った材料で携帯食品をひとつ作る」「キャンプ場の地図を作る」「キャンプ場内(周辺)の樹木、植物、昆虫、鳥、動物、岩石、地形… を調べる」「星空をスケッチし、知っている星座名、星名等を記入する」「自然物を加工して、サイトの飾り、おもちゃ、楽器… を作る」「ラジオの気象通報を聴き、天気図を作成し掲示する」「キャンプ場内のゴミ拾い、落し物の発見と届け出、危険箇所探しと指摘… を行う」「キャンプ場内に隠された宝物を見つける」などの課題がいくつも書いてあり、それのひとつひとつを達成したときに、申し出によりシールやサインが貼付、記入されます。隊の作業の手伝いや選択プログラムの準備や実施の手伝いもその対象です。この時間帯に成人リーダーに申し出て、級や章の実技の審査を受けることもできます。

 班に課する課題を設定することもあります。「壁新聞を毎日作り、掲示する」「キャンプファイヤーの班の出しものをひとつ考え、ファイヤーの場で発表する」「班サイトに、門、集会所、信号塔… を作る」「近辺を周る小ハイクを計画し、隊長の承諾を得て実施する」などです。




 「記録帳」の語が何度か出てきました。それはいわゆる「キャンプのしおり」のようなもので、キャンプの説明や日程表のほか、プログラム参加や課題達成の記録帳、また日記にもなっており、参加者にとって大切な思い出のノートになることを期待しています。


 選択プログラムと閑時作業は、自発性とチャレンジ精神のかん養を意図したものであることを気付いていただけると思います。参加者集団によっては若干の工夫を加えることが必要な場合もあります。
 ひとつの考えとして、記録帳のシールやサインの数を競う競争の設定とか数の多い者の表彰というのもありますが、しかしこれはボーイスカウトのバッジシステムの理念からいって、慎重にすべきでしょう。参加者集団の特性を見極めて、これをすることのメリットとデメリットをよく検討する必要があると思います。


 ここでは、中学生集団のキャンプを想定して、その例を記しました。対象が、小学生の場合、高校生の場合、また、よく知り合った者の集団か、初めて会う人達の集団か、キャンプ経験の度合、など、それぞれの要素によって、組織、プログラムの時間配分や構成、準備の仕方、参加者への指示の出し方、介入の度合等、まったく違います。

 キャンプというものは、天候やけが等、いろいろな要素の影響を受けるものです。何かあったら素早く対応できる心構えが必要です。これはまずいと思ったらすぐに軌道修正ができる柔軟さが不可欠です。 成人リーダーの組織体制が成否を分ける重要な要素です。


 [ 1998. 6.20 登載] 

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