私のB-Pスピリット研究 G

野外活動に託されたB-Pスピリット
The outdoors is par excellence the school for observation and for realizing the wonders of a wondrous universe.

なぜ“野外活動”なのでしょうか

 人々がボーイスカウトを思い浮かべるとき、ほとんどの人は、キャンプやハイキング等、野外での活動を連想すると思います。

 B-Pは、ボーイスカウトのちかい(Scout Promise)に、“To do my duty to God and the King(Queen),”(神と国とに誠を尽し)を設定し、また著書等において、ボーイスカウト運動の目的は、Health(健康), Happiness(幸福), Helpfulness(人の力になる器量)をもった市民を育てることであると述べています※。その上で、その手段として、B-Pは、野外活動を設定しています。なぜでしょうか。
※ I have over and over again explained that the purpose of the Boy Scout and Girl Guide Movement is to build men and women as citizens endowed with the three H's ― namely, Health, Happiness and Helpfulness.(私は、ボーイスカウトとガールガイド運動の目的は、健康、幸福、そして人の力になる器量という三つのHを得た市民である男女を育てることであると、何度も繰り返し説明してきました。) (LESSONS FROM THE VARSITY OF LIFE(人生大学からの教訓),1933 から)

 ボーイスカウトの進級課目は、スカウトクラフトと称して、野外活動に役立つ技能の鍛錬を重視しています。なぜでしょうか。

 私が結論するその論理は、B-Pが次のように思い至ったことによると思います。

 私たちの務めとして神への奉仕を設けているが、それができるのは、造物主である神は存在するという精神的な確信があってのことである。神をまだ知らない人、神の存在を信じていない人が、どうして神への務めを果たすことができるだろうか…。では、どうしたら人々に神の存在を知らしめることができるか…。そうだ、神の存在を知る最も確実な機会は、深い大自然の中で、神の意思のサインに接するときである。だから私たちは、人々に深い大自然に接する機会をもっともっと設けなければならない、と。

 しかし文明が発展し、都市化された現代(当時)の生活においては、そのような大自然に入り込むということは、人々の関心ではなく、何よりも自然は危険であり、それは勧められることではない、という考えが一般的でした。

 そのような現代(当時)において、人々を大自然に連れ込む…、どうしたら良いか…。その手段として、B-Pは、実験キャンプを行い、自然の中での生活の魅力を著書にて公表し、教育の名を借りて、諸構想を展開していったのです。

 子どもたちはキャンプをしたがっている…、こんなものではありません。子どもたちを何とかしてキャンプに連れ出そう。神の存在を知らしめるためには、このプロセスを設けなければ私たちは進めないのだ。… B-Pは、きっとそのような思いで、いてもたってもおられなくなり、ボーイスカウトの構想を練っていったのだと思います。

 進級課目に、観察、野外料理、開拓技術、通信等、野外活動に要する技能を多く配したのは、野外での生活、すなわちキャンプを行うにおいて、安全を確保し、快適さを維持し、便利さを追及し、楽しめる技能として選び抜かれたと考えることができます。1級スカウトの考査にパスできる技量があれば、もう一人前に安全なキャンプを展開することができる。だから、子どもたちを野外に連れ出すためには、最低限、1級の技能を身に付けさせる必要があったのです。逆に捉えれば、1級スカウト程度の技量がなければ、危なっかしくて、とてもキャンプなんかさせられないということです。ですから、B-Pは、すべてのスカウトについて、1級の達成を最低条件に掲げたわけです。

 いやいや、野外こそが、スカウトクラフトを実践、展開できる、素敵なフィールドである。皆で野外に繰り出し、身に付けたスカウトクラフトで楽しもう、というのが本来の捉え方ですね。




 B-Pの壮大な構想として、シースカウトやエアースカウトがあるということはよく知られています。B-Pは、広大な海原での活動が、また大空での展開が、野山での生活よりも、より神を知る(又は感じる)チャンスが増大するのではないかと期待したのかもしれません。



 ひとたび神の存在を知った後であれば、スカウトクラフト云々は通り越して、自分は神によって生かされている身であるという自覚を基に、神への奉仕、人々への奉仕が、自発的にできる人間に成長している。その時こそがB-Pが意図した教育が達成された時なのでしょう。



 B-Pは、軍務ではありましたが、長年の、世界を舞台とした野外の、大自然の中での生活体験がありました。その中でB-Pは、きっと本当の神の存在を確信したのでしょう。B-Pは、牧師の子息であり、敬虔なクリスチャンでしたが、B-Pが知った神は、おそらくそれを超越させてしまう思いを芽生えさせたのでしょう。私は、B-Pのこの体験がボーイスカウト展開の原点だったのだと思います。




B-Pの示唆


 以上の論理展開を示唆しているB-Pの思いが、「隊長の手引」("AIDS TO SCOUTMASTERSHIP",1920)、「スカウティング フォア ボーイズ 第3部 原理と方法」("SCOUTING FOR BOYS" presentation edition PART THREE, PRINCIPLES AND METHODS)、またスカウター誌(The Scouter)への投稿等に記されています。その例を次に揚げます。

 Through sips of nature lore imbibed in woodland hikes the puny soul grows up and looks around. The outdoors is par excellence the school for observation and for realizing the wonders of a wondrous universe.
 It opens to the mind appreciation of the beautiful that lies before it day by day. It reveals to the city youngster that the stars are there beyond the city chimney-pots, and the sunset clouds are gleaming in their glory far above the roof of the “cinema” theater.
 The study of nature brings into a harmonious whole the question of the infinite, the historic, and the microscopic as part of the Great Creator’s work. And in these, sex and reproduction play an honored part.
 Scoutcraft is a means through which the veriest hooligan can be brought to higher thought and to the elements of faith in God; and, coupled with the Scout’s obligation to do a Good Turn every day, it gives the base of Duty to God and to Neighbor on which the parent or pastor can build with greater ease the form of belief that is desired.

 森の中のハイキングで、自然の振る舞いを目にし自然が発する声を聞いて(nature lore)吸収したそのひと味ひと味を通して、小さな魂は成長し、周囲にも目を向ける。野外は観察の目を養い、素晴らしい宇宙の不思議さを実感する優れた学校である。
 野外は日ごと目の前にある美しいものの真の姿を見る(appreciation)心を開いてくれる。街の煙突の彼方にある星を、夕焼け雲が「映画」館の屋根のはるか上空の壮厳さの中に輝いていることを街の若者に見せてくれる。
 自然について学ぶと、無限なもの、歴史上の出来事、極めて微細なものの問題は偉大な造物主の御業の一環として調和のとれた統一体であることがわかる。そして、これらの中で、性や生殖は名誉ある役割を担っている。
 スカウトクラフトは、まったくの不良をより高い思考へと、そして神への信仰心へと導くことのできる一つの手段であり、毎日善行をするというスカウトの義務と結びついて、神と隣人に対する「つとめ」の基礎をもたらすものである。そして、親や聖職者は、その上に望ましい信仰形式をいともたやすく作り上げることができる。
(「隊長の手引(新訳版)」公益財団法人ボーイスカウト日本連盟 2006年発行 34頁、下線部は舟橋により訳を修正


 The camp cannot fail to grip every boy with its outdoor life and taste of the wild, with its improvised cooking expedients, the games over woodland and moor, the tracking, the path-finding, the pioneering, the minor hardships and the jolly camp-fire sing-songs.
Nature Lore. ― Above all things the value of the camp is the opportunity that it gives of bringing the boys to live face to face with Nature. This has its fascination for almost every kind of boy so soon as its joys are made clear to them.
 The average street boy going into the country will, so soon as the novelty has worn off, feel bored and will be longing for his cinema and shop windows again.
 But when he has learnt to enjoy the material pleasures of camping above stated, and has also had his eyes opened to the wonders of Nature, he will be the young backwoodsman that we want.
 It means the presentation to him of the calls and customs of birds and animals, the wonders of the stars, the beauties of the flowers, of the hills, of the sunsets, the wonderful and minute mechanism of the individual specimen whether of plant or mammal, insect or reptile, and its exact reproduction in millions of the same species.
 Through these one can cultivate in the boy a closer observation, a new sense of Nature lore, a knowledge of biology, a sensible and proper view of sex relation, together with a realization of God the Creator.
(SCOUTING FOR BOYS Twenty-Eighth Edition(1953) PRESENTATION EDITION, p310)

 キャンプは、即興的な料理、森林や荒野でのゲーム、追跡、探索、開拓、ちょっとした困苦、そしてキャンプファイアで歌を歌う楽しさ、そのような野外での生活とその野生の味で、あらゆる少年をひきつけます。
 大自然の振る舞いを見、大自然が発する声を聴く(Nature Lore) ――キャンプの価値は、何よりも、少年たちが自然に対面して、生き生きとさせる機会となることです。これは、ほぼどのような少年であっても、喜びをもたらすという魅力をもっています。
 平均的な町の少年は、田舎に行っても、その目新しさに慣れてしまうとすぐに退屈し、映画館やショップウィンドウを再び恋しがるようになってしまいます。
 しかし、先に述べたようなキャンプの様々な愉快で心地良いそんな楽しさを学び、それから自然の驚異にも目を開けたとき、彼は私たちが望んでいる若き杜の住人になっていることでしょう。
 それは、鳥や動物の鳴き声や習性、星々の不思議、花々の、丘の、そして日没の美しさ、植物、哺乳動物、昆虫また爬虫類等のすばらしい精密なメカニズム、同じ種の何百万ものその正確な複製、それらを少年に見せることを意味します。
 これらを通して、少年に、鋭い観察力、大自然の振る舞いを見、大自然が発する声を聴く新しい感性、生物学の知識、性的関係についての賢明でかつ適切な見方、そしてそれらと共に、造物主たる神の実感、を養うことができます。(舟橋訳)
 (参考:「スカウティング フォア ボーイズ」ボーイスカウト日本連盟 昭和32年初版発行(中村知氏訳本) 第3部 原理と方法 535頁)


 The Camping Season
 Lots of Woodcraft and Nature Study should be our Aim.
 Most Troops seem to have arranged their work for helping “on the land,” and no better aim could they have just now. But to Scoutmasters in charge I would say ― give your boys all you can of woodcrraft and Nature study; of pioneering and pathfinding actually in practice. The Nature study should be a real close touch with Nature, far beyond the academic dipping into the subject which passes under the name in school. Collecting, whether of plants or “bugs,” and investigation, whether of beasts or birds, are all-absorbing studies for the boy and mighty good for him.
 Don’t let your camping be the idle boring picnic that it can become when carried out on military lines. Scouting and backwoodsmanship is what we’re out for, and what the boys most want. Let them have it good and strong.
 It is in camp that the Scoutmaster has his opportunity for inculcating under pleasing means the four main points of training. Character, service for others, skills, and bodily health. But beside all it is his golden chance to bring the boy to God through the direct appeal of Nature and her store of wonders.
from “The Camping Season” / July, 1917 / The Scouter / B.-P.'S OUTLOOK

 キャンプシーズンの到来です。
 (キャンプは、) ウッドクラフト(Woodcraft)と自然研究(Nature Study)、これをたくさん行うことを私たちのねらい(Aim)とすべきです。
 ほとんどの隊(Troops)は、「野山で」の生活に役立つ作業を仕組むことに力を入れているように見えますが、今のところ、これに勝るねらいはないと思われます。しかしそのようなことをしている隊長(Scoutmasters)に私が言いたいことは、― 少年たちにできるかぎりのウッドクラフトと自然研究、つまりパイオニアリング/工兵技法・縛材工作(pioneering)とパスファインディング/進路探索法・原野行進(pathfinding)の実践を設けなさいということです。それから自然研究は、自然との真の密接な接触(real close touch)であるべきです。これは学校の名のもとでなされている学科という机上の勉強(academic dipping)をはるかに超えるものです。植物とか「虫けら」の収集であっても、獣とか鳥の観察であっても、それらは少年にとってすべてが熱中できる勉強であり、そしてとてもためになるものです。
 あなた方は、キャンプを、軍隊で行われるときに起こり得るような、中身のない退屈なピクニック(idle boring picnic)にしてはいけません。スカウティングと森林生活者技能・資質(backwoodsmanship)こそが、私たちが求めているものであり、また少年たちが最も望んでいるものです。それらをとおして少年を善良で心身堅固な人に育てようではありませんか。
 キャンプこそが、隊長がスカウト訓練の四つのポイント、すなわち品性・人格(character)、他者への奉仕(service for others)、技術・技量(skills)、そして身体の健康(bodily health) を楽しく教える機会になるのです。しかし何よりも、自然が放つその驚異の数々、そのダイレクトアピールをとおして、少年を神に導く最高のチャンスになるのです。(舟橋訳)



 つまり、野外活動(ハイキング(Hiking)、キャンプ(Camp)、ウッドクラフト(Woodcraft)、ネイチュアロア(Nature Lore)、自然研究(Nature Study))は、B-Pが編み出した、神に接近するためのひとつのアプローチ手法と捉えることができます。

 B-Pは、この構想を、当初、英国内のキリスト教青少年団体であるボーイズブリゲードやYMCA等に持ち込んでいます (1906年、ボーイズブリゲード発行誌にそれが紹介されました)。しかしそれらの諸団体は、聖書の授業や教練、楽隊等の活動スタイルが既に確立していた事情があり、加えて諸々の展開もあり、新たにボーイスカウトという活動団体を立ち上げたという経緯が伝えられています (B-Pは、亡くなるまでボーイズブリゲードの副総長でもありました。ですから、ボーイスカウトはボーイズブリゲードの分家であるという見方もあります)。(参考:E.E.レイノルズ著「スカウト運動」S49.6.30 財団法人ボーイスカウト日本連盟訳発行 等)
 
  ※ Nature Lore … B-Pが諸著書において多用している Nature Lore の語句は、直訳すると"自然の伝承"とか"自然の知識" "自然の案内"となります。中村知氏は、これを「自然のささやき」とか「自然界の教訓」「自然研究」等と訳しています。また三島通陽氏は、「自然の教え」とか「自然にまつわる教訓」等と訳しています。でも、B-Pの言い回しから解すると、"自然にひたって観賞すること" "自然の細部まで深く見ること" "自然から意味を見つけ出すこと" という能動的な行為や態度、また "自然が人間に見せてくれる振る舞い" "自然のにぎわい"(を見、また聞き取ること)、または "自然との戯れ"、を指すように感じました。B-Pがしばしば用いた "to read the Book of Nature (大自然という本を読む)" のニュアンスとも重なります。私は、これらを包括して、"自然に積極的に接し、大自然の振る舞いを見(観)、大自然が発する声を聞(聴)く取り組みや態度・習慣"と訳すことにしました。



 Nature lore, as I have probably insisted only too often, gives the best means of opening out the minds and thoughts of boys, and at the same time, if the point is not lost sight of by their Scoutmaster, it gives them the power of appreciating beauty in nature, and consequently in art, such as leads them to a higher enjoyment of life.
 This is in addition to the realisation of God the Creator through His wondrous work, which when coupled with active performance of His will in service for others constitutes the concrete foundation of religion.


 大自然の振る舞いを観、大自然が発する声を聴くこと(Nature lore)は、私は今までこのことをしつこすぎるほどいっているかもしれませんが、これは少年たちの心と思想をひらくための最上の手段であり、同時に、隊長がその要点を見失わないように導きさえすれば、大自然の美しさを、ひいては人の技の美しさを、正しく認識・評価する(appreciating)力をもたらし、それは人生のより高い楽しみへと少年たちを導くことになります。
 これは、造物主たる神の驚くべき御業を通して神を実感することが、他の人に奉仕するという神の意思としての能動的な行動に結び付いたとき、それは信仰の硬い基盤の構成要素になるということです。(舟橋訳)
(参考:「隊長の手引(新訳版)」公益財団法人ボーイスカウト日本連盟 2006年発行 57頁)


NATURE LORE


 以上の記述から、ネイチュアロア(Nature Lore)は、B-Pの構想における極めて重要な概念であることがわかります。しかしこの語句を日本語に適確に置き換えられる用語がないので、B-Pの著述の流れからこれの意味を組み立てるしかありません。

 SCOUTING FOR BOYS の原本の本文(CAMP FIRE YARN No.1〜No.28)の中で Nature Lore の語句が出てくるのは、次の一か所だけです。これの邦訳本(「スカウティング フォア ボーイズ」昭和50年5月18日発行の改訂版)では、下記のように「自然についての知識」と訳されています (中村知氏訳版では「自然研究」とあります)。でもそれらの文脈に含まれる意図を推察すると、「自然に積極的に接し、自然についての広く深い観察や調査をする活動」と読み取ることができると思います(訳文末尾の数字はそれの頁です)。

 Each Scout should learn the call of his Patrol animal. He should be encouraged to know all he can about its habits, etc. This can be a first step in nature lore.
 スカウトに,班の動物の鳴き声を覚えさせる。その動物の習性などをできるだけ調べるように勧める。これは自然についての知識の最初の一歩になる。(p45)
 各スカウトは、パトロール動物のコールを学ばねばならない。そしてその動物の習性などに関してできるだけ知るよう奨励すること。これこそ自然研究への第一歩である。(中村知氏訳版p123)

 各スカウトに自班(班別章)の動物の呼び声を学ばせます。更にその動物の習性などをできる限り多く知るよう奨励します。これが自然に積極的に接し、大自然の振る舞いを観、大自然が発する声を聴く取組みや態度・習慣 = ネイチュアロア への最初のステップになるのです。(参考までに舟橋訳)

 これ以後、原本の本文には Nature Lore の語句は出てきませんが、これを狙ったと思われる記述が、各章のところどころに認められます。次の記述の意図したものが Nature Lore と理解することができます。

 PATROL PRACTICES IN ANIMAL OBSERVATION 生物観察の班練習 (以下p265〜)

 In the country, send out the Scouts to find out by observation, and to report on such points as these:
 How does a wild rabbit dig its hole ? When a lot of rabbits are alarmed, does a rabbit merely run because the others do, or does he look around to see what is the danger before he goes?
 Does a woodpecker break the bark away to get at insects on a tree trunk, or does he pick them out of holes, or how does he get at them?
 Does a trout when disturbed by people passing along the bank go up or down stream? Does he go away altogether or return to his place ?

 田舎では,スカウトを外に出して,次のようなことを観察させ報告させる。
 野ウサギは穴をどうして掘るか。ウサギの群が驚いた時,ウサギはほかのウサギが走るからそれについて走るだけなのか,見回してどんな危険があるか見てから走るのか。
 キツツキは,木の幹の皮をとり除いて幹にいる虫をとるのか,穴からくわえ出すのか,またはどんな方法でとるのか。
 岸を歩く人に驚いた時,マスは上流に逃げるか,下流に逃げるか,逃げて行ったきりになるのか,それともそこへもどってくるのか。


 If in a large town, take the Scouts to the Zoological Garden or to the Natural History Museum. About half a dozen animals would be quite enough to study for one day.
 大きな都市では,スカウトを動物園か自然科学溥物館につれて行く。1日に観察するのには6種類くらいで十分だ。

 Get Patrols to find out all about their Patrol animals. Learn their calls. Discover their haunts, tracks and habits. If they are not local animals, study them in a museum or zoo.
 班に,班の動物についてあらゆることを調べさせる。その鳴き声を覚える。その生育地,足跡,習性を探る。その地方にいない動物だったら,博物館か動物園で研究させる。

 Get each Patrol to keep an outdoors log for a month, then compare results. Each Scout should contribute something to the log, such as a note of something seen or a sketch of a bird or animal. Or have a nature scrap book, with cuttings from newspapers and magazines of nature photographs, notes on outdoor life, nature calendars, etc.
 各班が1か月間の屋外活動日誌をつけ,それを比較する。すべてのスカウトが,見たものを記録するとか,鳥や獣のスケッチをするとかして,その日誌を作るのに参加しなければならない。または,新聞や雑誌から,動物写真や野外生活の記事や自然のカレンダーなどを切り抜いて,自然のスクラップブックを作る。

 Encourage the taking of photographs. Even the cheapest camera can be used for showing the surroundings in which each kind of bird makes its nest.
 写真をとることを勧める。どんな安カメラでも,それぞれの鳥が巣をつくる環境を写しとるのには十分使える。

 Bird-feeding can be practised both in town and country, particularly in the winter.
 A window-sill feeding-tray in town can attract many different birds. The provision of water in summer is also important.
 In the country you can make a "club" for the birds, with a "dining-room", a basin of fresh water, and branches to lounge on.

 鳥にえさをやることは,ことに冬の間都市でも田舎でもできる。
 都市では窓わくのえさ皿にいろいろの鳥が集まってくる。夏は水をやることも大切だ。
 田舎では,食堂,水飲み場,とまる枝のある小鳥のクラブを作ってやることができる。


 Build up a Patrol library of well-illustrated books for recognizing animals, birds, reptiles, fish and insects.
 班の図書に,獣,鳥,は虫類,魚,こん虫についての絵の多い本をそろえる。

 Try to get a pair of good field glasses for the Patrol so that the Scouts can learn the fun of watching birds and animals. Also introduce the Scouts to the use of the magnifying glass, and, if possible, the microscope. Any instrument attracts a boy, and the new world it opens up will fascinate many of the Scouts.
 スカウトに鳥や獣を観察するおもしろさを覚えさせるため,班に上等の双眼鏡を二つ備えるように努力する。またスカウトに拡大鏡,できれば顕微鏡を使わせる。これらの器機はすべて少年の興味をひくし,それによって開かれた新しい世界はスカウトを魅了する。

 以上は "キャンプファイア物語15 動物" の章の中の記述の一部です。このような感じの記述が、"16 植物" の章や、その他 星 や 気象、地形 等について著した箇所にも認められます。そのような取り組みが、ネイチュアロア(Nature Lore)と言えるものでしょう。

 参考情報:B-Pの各著書において、Nature Lore の語句の出現回数を調べてみました。それを眺めると、スカウト向けの著書ではなく、指導者向けの著作にそれが多用されていることがわかります。以下、主な著書におけるその出現回数を記します。
 "YOUNG KNIGHTS OF THE EMPIRE (1916)"…0、 "THE WOLF CUB'S HANDBOOK (1916)"…0、 "GIRL GUIDING (1918)"…1、 "AIDS TO SCOUTMASTERSHIP (1920)"…9、 "ROVERING TO SUCCESS (1922)"…2、 "SCOUTING AND YOUTH MOVEMENTS (1929)"…4、 "LESSONS FROM THE 'VARSITY OF LIFE (1933)"…1、 "B.-P.'S OUTLOOK"…9、 "PRINCIPLES AND METHODS (SCOUTING FOR BOYS presentation edition PART THREE)"…5。


野外活動の本当の意図


 要するに、B-Pが意図するボーイスカウトにおける野外活動は、少年を信仰の世界に効果的に導くための手段といえます。そのアプローチの方法、プロセスは、まず Nature Lore(自然に積極的に接してその多様さや不思議を知る習慣や態度またはゲーム)から始まります。それは Nature Study(自然についての学習や研究を通して知識を深める)へと進みます。それはやがて Appreciation of Natur(自然についての正しい認識・理解・評価)、すなわち wonderful work of the Creator(造物主の素晴らしき見事なる御業)や law of the Creator(造物主が定めた法則)の発見や気づきとなります。それは realisation of God the Creator(造物主たる神の実感)、すなわち the concrete foundation of religion(信仰の硬い基盤)へと導かれることになります。

 ハイキングやキャンプ、ウッドクラフトは、その面白さにより少年たちを引き付けるいわば釣餌なのでしょう。それは、ネイチュアロア(Nature Lore)や自然研究(Nature Study)に確実に結びつけるための導入のアトラクションということができます。ですから、キャンプやウッドクラフト云々に留まっているプログラムではまだ未完成です。ネイチュアロア(Nature Lore)に気配りし、自然研究(Nature Study)を促し、それらを通して野外活動が少年を信仰に導くためのプログラムになって、初めて B-Pの意図したプログラムになるのです

 B-Pの"AIDS TO SCOUTMASTERSHIP"の中の次の記述が彼の考えの基底と思います。

 Nature Study ― There are sermons in the observation of Nature, say, in bird life, the formation of every feather identical with that of the same species 10,000 miles away, the migration, the nesting, the colouring of the egg, the growth of the young, the mothering, the feeding, the flying power ― all done without the aid of man, but under the law of the Creator; these are the best of sermons for boys.
 The flowers in their orders, and plants of every kind, their buds and bark, the animals and their habits and species; then the stars in the heavens, with their appointed places and ordered moves in space, give to every one the first conception of Infinity and of the vast scheme of his Creator where man is of so small account. All these have a fascination for boys, which appeals in an absorbing degree to their inquisitiveness and powers of observation, and leads them directly to recognise the hand of God in this world of wonders, if only some one introduces them to it.
 The wonder to me of all wonders is how some teachers have neglected this easy and unfailing means of education and have struggled to impose Biblical instruction as the first step towards getting a restless, full-spirited boy to think of higher things.


 自然研究――自然の観察から多くの垂訓=導きの言葉(sermons)が得られます。例えば鳥の生態、同じ種類の鳥は、たとえ1万マイルへだてた所でも羽毛の並び方は同じであり、渡り、巣作り、卵の色、雛の育ち方、母鳥の世話の仕方、食餌、飛翔力など――これらすべてが人間の力によらず、造物主の定めたところに従ってなされています――このようなことを知ることが、少年たちにとって最良の垂訓=導きの言葉(sermons)になるのではないでしょうか。
 季節に従って順番どおりに咲く花々、あらゆる種類の植物のつぼみや樹皮、いろいろな動物の習性や種類、そして宇宙におけるそれぞれ定められた場所に整然と運行する星々――これらは果てしない造物主の広大な計画の中にあって、人間が何とも小さい存在であることをすべての者に知らしめます。これらはすべての少年たちを魅了する力を持ち、彼らの探求心と観察力を夢中にさせるほどに刺激するものであり、もし誰かが糸口をつけてやりさえすれば、この驚異に満ちた世界における神の御業を、少年たちに直に知らしめてくれます。
 私が不思議でならないのは、どうして多くの教師たちは、この容易で確かな教育の方法を無視して、活発で元気いっぱいの少年に、高尚なことを考えさせる第一段として、聖書の詰めこみをしようと苦労するのだろうかということです。(舟橋訳)
(参考:「隊長の手引(新訳版)」公益財団法人ボーイスカウト日本連盟 2006年発行 65頁)


ありがとうございました。(2015.11.29)




 参考までに
 スカウティングフォアボーイズ - 国立国会図書館デジタルコレクション
 <https://dl.ndl.go.jp/pid/9580322/1/1>
 スカウティング フォア ボーイズ S50発行改訂版 (やんちゃ隊の資料庫ウェブサイト)
 <http://scout.o.oo7.jp/scouts54.pdf>
 SCOUTING FOR BOYS (ウクライナ ドネプロペトロフスク スカウト協会ウェブサイト)
 <http://scouts.dp.ua/files/Scouting%20for%20Boys.doc>
 「隊長の手引」 ボーイスカウト日本連盟訳 (ボーイスカウト茨城県連盟ウェブサイト)
 <http://www.scout-ib.net/09SCIB-DB/ASM/AidToSM-1.html>
 <http://www.scout-ib.net/09SCIB-DB/ASM/AidToSM-2.html>
 AIDS TO SCOUTMASTERSHIP(隊長の手引)(International Scout Fellowship ウェブサイト)
 <http://www.isf-world.org/pdf/a2sm.pdf>
 LESSONS FROM THE 'VARSITY OF LIFE (人生大学からの教訓)(ScoutsCan.comウェブサイト)
 <http://www.thedump.scoutscan.com/varsityoflife.pdf>
 BOYS BRIGADE (ボーイズ ブリゲード) ウェブサイト
 <http://boys-brigade.org.uk/>
 "Johnny" Walker's Scouting Milestones Pages
 <http://scoutguidehistoricalsociety.com/>
 Pine Tree Web Home Page
 <http://www.retiredscouter.com/pinetreeweb/html/index.htm>
 SCOUTMASTERCG
 <http://scoutmastercg.com/tag/index/>
 ScoutWiki
 <http://en.scoutwiki.org/Main_Page>


私のB-Pスピリット研究
@ ボーイスカウト運動についての諸考察 (2014.10.5)
A スカウティングに託されたB-Pスピリット (2019.8.27)
B 「隊長の手引」に記されたB-Pスピリット (2015.8.14)
C ローバーリング ツウ サクセス に記されたB-Pスピリット (2015.8.15)
D 「パトロール システム」に記されたフィリップスのスピリット (2015.9.26)
E 進歩制度に託されたB-Pスピリット (2015.10.14)
F 信仰の奨励に託されたB-Pスピリット (2015.10.12)
G 野外活動に託されたB-Pスピリット (2015.11.29)
H スカウト運動に託したB-Pスピリット (2016.7.14)
I “ちかい”と“おきて”に託したB-Pスピリット (2016.12.12)
ベーデン-パウエルのラストメッセージ B-P's Last Message
J ボーイスカウト研究 (1979.12.14)
K ボーイスカウト実践記 (1980.4.28)
L ボーイスカウト活動プログラムの紹介 (1998.6.20)
M 《資料》 スカウティング フォア ボーイズ 序文(1940年)
N 《資料》B-Pの1926年の講演「ボーイスカウト・ガールガイド運動における宗教」



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