私のB-Pスピリット研究 I
“ちかい”と“おきて”に託したB-Pスピリット
― All promises are important things and should never be broken, but when you promise on your honour to do a thing you would rather die than break such a promise. ―
スカウトにとっての“ちかい”と“おきて”の重さ
B-Pは、どのような期待をかけて“ちかい”と“おきて”を設けたのでしょうか。B-Pは、何を託して“ちかい”と“おきて”にこのような文言を定めたのでしょうか。そのB-Pの意図を探りたいと思い、記しました。
B-Pが、“ちかい”や“おきて”を取り上げ、それらを逐条的に解説した文章は、“スカウティング フォア ボーイズ”の“営火夜話 その3 テスト”の章("SCOUTING FOR BOYS" CAMP FIRE YARN. No.3 TESTS )と、“帝国の若き騎士たち”("YOUNG KNIGHTS OF THE EMPIRE" 英国1916年発行)、“ローバーリング ツウ サクセス”("ROVERING TO SUCCESS" 英国1922年発行、ローバースカウト向け記述) の中にあります。
最初に、“スカウティング フォア ボーイズ”から、それについて記された箇所を載せます。
At the investiture you will have to make the Scout Promise in front of the rest of the Troop.
The Scout Promise is :−
"On my honour I promise that I will do my best−
To do my duty to God, and the Queen.
To help other people at all times.
To obey the Scout Law."
This is a very difficult promise to keep, but it is a most serious one and no boy is a Scout unless he does his best to keep his Promise. All promises are important things and should never be broken, but when you promise on your honour to do a thing you would rather die than break such a promise. So you see Scouting is not only fun provided for you, but it also requires a lot from you and I know I can trust you to do everything you possibly can to keep your Scout Promise.( SCOUTING FOR BOYS Twenty-Eighth Edition, 1953, p47)
叙任式(入隊式のこと)の時,君は,ツループの,みんなの前でスカウトのプロミス(約束――ちかい)をしなければならない。スカウトのプロミスは――
「私は名誉にかけて
ゴッドとクイーンに対する私のデューティを行なうため
いつも,他の人々を援けるため
スカウトローに従うため
私のベストを尽すことを約束します」
これは,誠にむずかしい約束である。だが,一番真剣なものでプロミスを守ることに最善を尽さないならばスカウトにはなれない。プロミスの全ては,どれも重要で決して破つてはならないものであるが,名誉にかけて約束した以上,これを破る位ならむしろ死んだ方がましだと考えるだろう。故にスカウティングというものは,面白さを与えるだけではなく,君等に一つの運命を要求しているものだということを知るだろう。私は君たちがスカウトプロミスを守るためできる限りの努力をするものと確信する。(「スカウティング フォア ボーイズ」ボーイスカウト日本連盟 昭和32年初版発行(中村知氏訳本) 95頁)
少年がスカウトの隊に正式に入隊するためには、最初の課目の達成とともに、“ちかい(Scout Promise)”をたてることを求められます。つまり、今、スカウトであるということは、そのすべてが、ちかい をたてた人々ということになります。そのことについて上記のB-Pの記述から感じるに、“君は名誉にかけて誓ったのであるから、自分の命をかけてそれを守り通さなければならない”程の態度を求めています。それが守れないようであれば、死んだ方がまし、とまで言い切っています。
更に、“おきて(Scout Law)”に対する態度として、次のように記しています。
The Scout Law 1. A Scout's Honour is to be Trusted.
If a Scout says "On my honour it is so", that means that it is so, just as if he had made a most solemn promise. Similarly, if a Scouter says to a Scout, "I trust you on your honour to do this", the Scout is bound to carry out the order to the very best of his ability, and to let nothing interfere with his doing so. If a Scout were to break his honour by telling a lie, or by not carrying out an order exactly when trusted on his honour to do so, he may be directed to hand over his Scout Badge, and never to wear it again. He may also be directed to cease to be a Scout.( SCOUTING FOR BOYS Twenty-Eighth Edition, 1953, p45)
スカウト・ロー 1 スカウトの名誉は信頼されることにある。
もしスカウトが「私の名誉にかけて,こうである」というならば,その言葉は最も厳粛な約束をしたのと同じ程度に扱われる。同様にスカウターが,スカウトに対して「私は君が,これをすることを君の名誉にかけて信じる」といつたならば,そのスカウトは自分の能力の最善をつくして,その命令を実行する責任をおう。そしてそれを妨害するあらゆるものを排除する。もしスカウトが,嘘をついて自分の名誉を破るならば,または名誉にかけてそうすることを信じられたのに,その命令を実行しなかつたならば,彼のスカウト章は取りはずすよう命令され,二度と再びつけられないだろう。即ち彼は,スカウトたることを,やめるよう指令されるであろう。(「スカウティング フォア ボーイズ」ボーイスカウト日本連盟 昭和32年初版発行(中村知氏訳本) 91頁)
スカウトは、嘘をついたりスカウターの命令を実行しないのであれば、スカウトをやめるべき、とB-Pは述べています。
これほどまで重い表現にして、思春期といわれる自我の確立すらまだ不完全の時期の少年に向けてそれを発したB-Pの意図は何でしょうか。
B-Pの著書や発言を網羅して検証すれば、その意図がおぼろげに見えてくると思いますが、それはとても手間のかかる作業です。そのような中で、B-Pと同じように、ちかい と おきて を逐条的に解説し、B-Pの代弁として、これを噛み砕いて述べたものが、フィリップスが記した「班長への手紙(その1)」(Letters to a Patrol Leader, first series, 1917)の中にあります。その部分を抽出して記します。
There is only one definition of a Scout.
A Scout is a boy who stands holding up his three fingers and says:
"On my honor I promise that I will do my best:
First, to do my duty to God and the King,
Secondly, to help other people at all times, and
Thirdly, to obey the Scout Law."
Every boy in the world who has taken that Promise is a Scout, and without taking it nobody can join the Scout Brotherhood.
スカウトについての定義は、たった一つしかありません。
スカウトとは3本の指を直立して、次のごとくいう少年であります。
「私は、名誉にかけて、私の最善をつくします。
第1、神と国王とに私のつとめをつくします
第2、いつも、他の人々を助けます
第3、スカウトのおきて10か条を守ります」
(訳註:この文句は、現在のと少し違う)
世界じゅうこのちかいをたてたなら、どこの少年でも皆スカウトであります。このちかいをたてない者はスカウト仲間に加入することはできないのです。(「パトロール・システム(班制教育)および班長への手紙 その1.その2. 復刻版」ボーイスカウト日本連盟 H25.1.23発行 72頁)
フィリップスは、おきて について、次のように展開していきます。
SCOUT LAW No. 1 A Scout's Honour is to be Trusted.
When the Chief says, "A Scout's Honour is to be Trusted," he means that, unless a boy's honor is to be trusted, the fact of his wearing Scout uniform and of carrying out Scout practices will not in itself make him into a Scout. The ten Laws are worded as facts.
The Chief tells you what a Scout is. A Scout is a boy who is honourable, loyal, useful, a friend both to human beings and to dumb animals, courteous, obedient, cheery, thrifty, and clean.
A boy who is not trying to be these things is not a Scout, however many badges he may wear on his arm. This should be made clear to every boy in the Movement, and I know that you can be trusted to make it clear to your patrol.
スカウトのおきて 第1 スカウトの名誉は、信頼されることにある。(訳註:スカウトは、信頼されることを名誉とする)
総長が「スカウトの名誉は、信頼されることにある」といわれた意味は、こうであります。1人の少年の名誉がもし信頼されないならば、(訳註:ひとからその少年が信頼されないならば)たとえスカウトの制服を着ていても、スカウトの勉強をしていても、それは彼を本当のスカウトにしたのではないという意味なのです。10か条のおきてというものは、真実正味を言葉にあらわしたものであります。
総長は、君たちにスカウトとは何かということを教えていますね。スカウトとは名誉ある、誠実な、役に立つ者で、人にも動物にも友となり。礼儀正しい、従順で、快活で質素な、そして純潔な少年のことであります。
以上のことがらを実行してみようとしない者は、スカウトではありません。いくらたくさんのバッジを腕につけていようが、スカウトではないのです。このことを、この運動に加入しているどの少年にもハッキリさせなければなりません。君は君の班の者たちに、それをハッキリさせる力をもっていると信頼されていることを私はよく知っています。(「パトロール・システム(班制教育)および班長への手紙 その1.その2. 復刻版」ボーイスカウト日本連盟 H25.1.23発行 78頁)
フィリップスは、ボーイスカウト黎明期にスカウトを経験した、B-Pも頼りにした若き指導者でした。上の記述を見ても、フィリップスは、B-Pの正に代弁者で、B-Pの忠実な後継者となる人格の持ち主であったと思います。
これに続くフィリップスの記述は、B-Pの ちかい と おきて に託した気持ちを表したものとして、受け止めることができると思います。
When the Chief wrote the first Scout Law, he had a vision of a world filled with a new race of boys and men who had got no secret schemes hidden away, no secret thoughts kept in the background, no secret sins unknown.
Everything would be open and straight and clear as the day, for the brotherhood of men would be a brotherhood of Scouts, and a Scout's Honour is to be Trusted.
総長は、このスカウトのおきての第1条を書くにあたって、一つの新しい世界というものを心に描いたのです。その新しい世界とは、新しい少年と新しい大人でいっぱいの世界で、そこには、かくされた秘密や陰謀の一つもない、そして秘密の思想のうしろだての一つもない、かつ眼にうつらないような秘密の罪悪の一つもない世界、そういう世界を描かれたのであります。
そういう未来の時代が来れば、もはや、すべてはあけっぱなしで、まっすぐで、清らかであって、人々の結びあいというものは、スカウトたちの結びあいになっているであろう。すなわち、お互いに信じあうことができ、スカウトの名誉が信頼されるのです。(「パトロール・システム(班制教育)および班長への手紙 その1.その2. 復刻版」ボーイスカウト日本連盟 H25.1.23発行 78頁)
さて、あなたはどのように感じられたでしょうか。
私は、B-Pは理想の世界を夢に抱き、その実現に至らしめるツールとして ちかい と おきて を設定したのだと思いました。
その理想の世界というのは、B-Pがよく God's Kingdom*と表現したその世界であるといえます。そこに住む人々は、皆、ちかい と おきて に記された器量を常識として有しているのであろうというイメージから策定されたのでしょう。
つまり、スカウトは未来の God's Kingdom の住民の先駆者であって欲しいという願いが込められていると理解しました。
そうした場合のB-Pの本音は次のどちらなのでしょうか。ちかいとおきてを履行してくれる少年を選び出す、つまり God's Kingdom 行きの切符を得るための選抜のツールなのでしょうか。それともそれくらいの心意気を持って指導にあたってもらいたいというスカウターに対する戒めなのでしょうか。あなたは、どちらであると思いますか。
もう一つ、ちかいとおきての内容や構成は、B-P発案の文言を踏襲すべきかどうかという問題があります。ボーイスカウトが全世界に広がり、ちかいとおきての内容は、その国々によって、また時期によって、違いがあります。日本においては、戦前の少年団日本連盟が定めた宣誓とおきての時代、戦後のアメリカボーイスカウトのちかいとおきてをベースにした時代、そして昭和63年にその一部が変更された以後の時代があり、その内容や構成は決して普遍的なものではありません。
B-Pの遺産を引き継ぐ者として
ちかいとおきては、その言葉が持つニュアンスから、命をかけるぐらいの意志を持っての履行を求めていると、きっと多くの人々は受け取るでしょう。ちかいとおきての履行の指導ができなかったり、またこれが履行困難な内容であったりしたならば、ちかいとおきてという重い言葉を唱えながら、それを言うだけの集団と評価されてしまうリスクがあります。ちかいとおきてをただ唱えるだけの少年少女にしないためにも、それは、その時代背景、社会の認識、理想とする人の生き方 を十分に考慮したもの、何よりも現代の少年少女の力量や社会環境等から見て、十分に履行できるものであるかどうかを絶えず検証する必要があります。そのような重い責任を、スカウターと連盟は負っているのだということを、私たちは真剣に受け止めなければなりません。
私たちが求める理想の社会はどのような社会なのか、私たちなりの God's Kingdom の姿を描けてこそ、その世界に生きる人たちの資質のイメージを描くことができます。そこから必然的にちかいとおきての内容が定まっていくでしょう。これは変化万来の人類の歴史の中の一つの時代を生きたB-Pが描いた理想との完全一致を求めるものではないでしょう。B-Pは後世の人たちにはたしてそれを望んだでしょうか。B-Pは私たちに少年少女育成に有効な素敵な HOW TO を残してくれました。これを私たちはどのように引き継ぐのか、それが問われているのだと思いました。
ありがとうございました。(2016.12.12)
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以下、参考までに、ちかい と おきて について、日本、イギリス、アメリカ の過去と現在のものを載せます。
日本の戦前の ちかい(⇒宣誓) と おきて (大14〜昭16…少年團日本聯盟・大日本少年團聯盟)
宣 誓
私は~聖なる信仰に基き名譽にかけて次の三條を誓ひます。
一、~明を尊び、皇室を敬ひます。
一、人の爲、世の爲、國の爲に盡します。
一、少年團のおきてを守ります。
お き て
一、健兒は忠孝を勵む。
二、健兒は公明正大、名節を生命とする。
三、健兒は有爲、世をuすることを務とする。
四、健兒は互に兄弟、總ての人を友とする。
五、健兒は常に親切、動植物を愛する。
六、健兒は長上に信ョし、團各長に服從する。
七、健兒は快活、笑つて困難に當る。
八、健兒は恭謙、禮儀正しい。
九、健兒は勤儉質素である。
十、健兒は心身共にCい。
日本の戦後の ちかい (昭22〜現在)
私は、名誉にかけて、次の三条の実行を誓います。
一、神(仏)と国とに誠を尽し“おきて”を守ります。
一、いつも、他の人々をたすけます。
一、からだをつよくし、心をすこやかに、徳を養います。
日本の戦後の おきて (昭22〜昭63)
スカウトの“おきて”
1.スカウトは、誠実である。
スカウトの真の資格は信用されうる人間にのみ与えられる
嘘をいわず、ごまかしをせず、信頼されて托された任務を正確に行なうことなどは、すべてスカウトの名誉を保つ基礎である
2.スカウトは、忠節をつくす。
スカウトは、義務をつくすべき相手に対し常に真心をもって義務をつくす、即ち国家に対しては忠誠であり、社会および家庭に対しては忠実であり、両親に対しては孝行である
そして自分の利益やわがままのためにこの義務を怠ることはない
3.スカウトは、人の力になる。
スカウトは、いつでも人を助ける用意がある
不時の災厄に善処し、人命を救助し、負傷者を看護し、常に進んで家事を手伝う。また恩返しの心で毎日少なくとも一つの善事を行なって社会に奉仕し、そして報いを求めない
4.スカウトは、友誼に厚い。
スカウトはすべての人を友だちと思い、すべてのスカウトを兄弟として、正しい明るい社会をつくる
5.スカウトは、礼儀正しい。
スカウトは長上を敬い何人をもさげすまない。どんな人にも不愉快な思いを与えずていねいに接する
6.スカウトは、親切である。
スカウトはすべての人、とりわけ婦人・老人・病人・助けのない人たちに親切である。また動植物はいうまでもなく一般の品物も親切に取り扱う
7.スカウトは、従順である。
スカウトは両親や先生や隊長、班長、その他の長上に素直に服従する。また法律や公けの決定は必ず守る
8.スカウトは、快活である。
スカウトはいつも朗らかで笑顔を忘れない
受けた命令には喜んで従い、どんな困難な仕事も進んでやり、不平や不満は決して云わない。言葉や動作ははっきりとする
9.スカウトは、質素である。
スカウトはぜいたくをせず、物も時も無駄にしない
常に節約に心がけて後日にそなえる。それは必ずしも自分のためのみでなく他の人のためにも役立つ
10.スカウトは、勇敢である。
スカウトは危険を恐れず笑って困難にあたる。また正義のためには他人の嘲笑や冷罵を意とせず、甘言やきょう迫に動かない。そして、後に悔を残さない
11,スカウトは、純潔である。
スカウトは体も、心も、行ないも常に清い、よい習慣を身につけ、上品な言葉を使い、正しい楽しみを持ち立派な仲間と交わる
12.スカウトは、つつしみ深い。
スカウトは信仰の心をあつくしてそのつとめに励む。しかも謙譲の心を失わず、他人の信仰や主張や風俗を軽んじない
日本の現在の おきて (昭63〜現在)
1 スカウトは誠実である
スカウトは、信頼される人になります。
真心をこめて、自分のつとめを果たし、名誉を保つ努力をします。
2 スカウトは友情にあつい
スカウトは、きょうだいとして仲よく助け合います。
すべての人を友とし、相手の立場や、考え方を尊重し、思いやりのある人になります。
3 スカウトは礼儀正しい
スカウトは、規律正しい生活をし、目上の人を敬います。
言葉づかいや服装に気をつけ、行いを正しくします。
4 スカウトは親切である
スカウトは、すべての人の力になります。
幼いもの、お年寄り、体の不自由な人をいたわり、動植物にもやさしくします。
5 スカウトは快活である
スカウトは、明るく、朗らかに、いつも笑顔でいます。
不平不満を言わず、元気よく、進んでものごとを行います。
6 スカウトは質素である
スカウトは、物や時間を大切にします。
むだをはぶき、ぜいたくをせず、役立つものは活用します。
7 スカウトは勇敢である。
スカウトは、勇気をもって、正しく行動します。
どんな困難なことがあってもくじけずに、新しい道をきり開きます。
8 スカウトは感謝の心をもつ
スカウトは、信仰をあつくし、自然と社会の恵みに感謝します。
お礼の心で、自然をいつくしみ、社会に奉仕します。
イギリスのB-P存命中の ちかい と おきて (P.O.R. 1938 より)
THE SCOUT PROMISE (Scouts)
On investiture, the Scout makes the following promise:---
"On my Honour I promise that I will do my best--- To do my duty to God and the King, To help other people at all times, To obey the Scout Law."
THE SCOUT LAW
The Scout Law is -
(1) A Scout's Honour is to be trusted.
(2) A Scout is loyal to the King, his country, his Scouters, his parents, his employers, and to those under him.
(3) A Scout's duty is to be useful and to help others.
(4) A Scout is a friend to all and a brother to every other Scout, no matter to what country, class or creed, the other may belong.
(5) A Scout is courteous.
(6) A Scout is a friend to animals.
(7) A Scout obeys the orders of his parents, Patrol Leader, or Scoutmaster without question.
(8) A Scout smiles and whistles under all difficulties.
(9) A Scout is thrifty.
(10) A Scout is clean in thought, word, and deed.
イギリスの現在の ちかい と おきて (The Scout Association - Policy, Organisation and Rules - May 2015 より)
The Scout Promise
(for Scouts, Explorer Scouts, the Scout Network and adults)
On my honour,
I promise that I will do my best
to do my duty to God and to The Queen,
to help other people
and to keep the Scout Law.
The Scout Law
1. A Scout is to be trusted.
2. A Scout is loyal.
3. A Scout is friendly and considerate.
4. A Scout belongs to the world-wide family of Scouts.
5. A Scout has courage in all difficulties.
6. A Scout makes good use of time and is careful of possessions and property.
7. A Scout has self-respect and respect for others.
アメリカボーイスカウト(Boy Scouts of America)の ちかい と おきて
1911年当時の ちかい と おきて (BOY SCOUTS HANDBOOK The First Edition, 1911 より)
The Scout Oath
Before he becomes a scout a boy must promise:
On my honor I will do my best:
1. To do my duty to God and my country, and to obey the scout law;
2. To help other people at all times;
3. To keep myself physically strong, mentally awake, and morally straight.
The Scout Law
1. A scout is trustworthy.
A scout's honor is to be trusted. If he were to violate his honor by telling a lie, or by cheating, or by not doing exactly a given task, when trusted on his honor, he may be directed to hand over his scout badge.
2. A scout is loyal.
He is loyal to all to whom loyalty is due: his scout leader, his home, and parents and country.
3. A scout is helpful.
He must be prepared at any time to save life, help injured persons, and share the home duties. He must do at least one good turn to somebody every day.
4. A scout is friendly.
He is a friend to all and a brother to every other scout.
5. A scout is courteous.
He is polite to all, especially to women, children, old people, and the weak and helpless. He must not take pay for being helpful or courteous.
6. A scout is kind.
He is a friend to animals. He will not kill nor hurt any living creature needlessly, but will strive to save and protect all harmless life.
7. A scout is obedient.
He obeys his parents, scout master, patrol leader, and all other duly constituted authorities.
8. A scout is cheerful.
He smiles whenever he can. His obedience to orders is prompt and cheery. He never shirks nor grumbles at hardships.
9. A scout is thrifty.
He does not wantonly destroy property. He works faithfully, wastes nothing, and makes the best use of his opportunities. He saves his money so that he may pay his own way, be generous to those in need, and helpful to worthy objects.
He may work for pay but must not receive tips for courtesies or good turns.
10. A scout is brave.
He has the courage to face danger in spite of fear and has to stand up for the right against the coaxings of friends or the jeers or threats of enemies, and defeat does not down him.
11. A scout is clean.
He keeps clean in body and thought, stands for clean speech, clean sport, clean habits, and travels with a clean crowd.
12. A scout is reverent.
He is reverent toward God. He is faithful in his religious duties and respects the convictions of others in matters of custom and religion.
現在の ちかい と おきて (BSA ウェブサイト より)
The Scout Oath
On my honor I will do my best to do my duty to God and my country and to obey the Scout Law; to help other people at all times; to keep myself physically strong, mentally awake, and morally straight.
The Scout Law
A Scout is trustworthy, loyal, helpful, friendly, courteous, kind, obedient, cheerful, thrifty, brave, clean, and reverent.
⚜ ⚜ ⚜
参考までに、SCOUTING FOR BOYS Twenty-Eighth Edition, 1953, CAMP FIRE YARN. No.3 の全文(P44〜P50)、(=「スカウティング フォア ボーイズ」ボーイスカウト日本連盟 昭和32年初版発行(中村知氏訳本)の“営火夜話 その3 テスト”の章 89頁〜100頁)を載せます。
CAMP FIRE YARN. No. 3
TESTS
TENDERFOOT − LAW − PROMISE − INVESTITURE
Tenderfoot Test
BEFORE he becomes a Scout a boy must pass the Tenderfoot Test. This is a simple test just to show that he is worth his salt and means to stick to it. It is nothing very difficult and you will find all you want to know in this book.
Here are the requirements :−
Must be between 11 and 18 years of age.
Know the Scout Law and Promise, and understand their meanings.
(See pages 45-47).
Know the salutes and their importance. (See pages 47 and 217).
The signs. (See pages 47 and 54).
Know the composition of, and how to hoist, break and By, the
Union Flag. (See page 39).
Clean a wound, and make and apply a dressing.
Tie the following knots : Reef, sheet bend, clove hitch, bowline, round tum and two half hitches, sheepshank, and understand their respective uses. (See page 97).
Know how to whip the end of a rope. (See page 98).
When you have satisfied your Scoutmaster that you can do all these things and do them properly, you will be invested as a Scout and be entitled to wear the Scout badge in the buttonhole of your coat, and on the left breast of your shirt when in uniform.
Scout Law
Scouts, all the world over, have unwritten laws which bind them just as much as if they had been printed in black and white.
They come down to us from old times.
The following are the rules which apply to Boy Scouts, and which you promise to obey when you are enrolled as a Scout, so it is as well that you should know all about them.
The Scouts' motto is :
Be Prepared
which means you are always to be in a state of readiness in mind and body to do your DUTY.
Be Prepared in Mind by having disciplined yourself to be obedient to every order, and also by having thought out beforehand any accident or situation that might occur, so that you know the right thing to do at the right moment and are willing to do it.
Be prepared in Body by making yourself strong and active and able to do the right thing at the right moment, and do it.
The Scout Law
1. A Scout's Honour is to be Trusted.
If a Scout says "On my honour it is so," that means that it is so, just as if he had made a most solemn promise.
Similarly, if a Scouter says to a Scout, " I trust you on your honour to do this," the Scout is bound to carry out the order to the very best of his ability, and to let nothing interfere with his doing so.
If a Scout were to break his honour by telling a lie, or by not carrying out an order exactly when trusted on his honour to do so, he may be directed to hand over his Scout badge, and never to wear it again. He may also be directed to cease to be a Scout.
2. A Scout's Loyal to the Queen, his Country, his Scouters, his Parents, his Employers and to those under him.
He must stick to them through thick and thin against anyone who is their enemy or who even talks badly of them.
3. A Scout's Duty is to be Useful and to Help Others.
And he is to do his duty before anything else, even though he gives up his own pleasure, or comfort, or safety to do it. When in difficulty to know which of two things to do, he must ask himself, "Which is my duty?" that is, "Which is best for other people?" and do that one. He must Be Prepared at any time to save life, or to help injured persons. And he must try his best to do at least one good turn to somebody every day.
4. A Scout is a Friend to all, and a Brother to Every Other Scout, no matter to what Country, Class, or Creed the Other may belong.
Thus if a Scout meets another Scout, even though a stranger to him, he must speak to him, and help him in any way that he can, either to carry out the duty he is then doing, or by giving him food, or, as far as possible, anything that he may be in want of. A Scout must never be a SNOB. A snob is one who looks down upon another because he is poorer, or who is poor and resents another because he is rich. A Scout accepts the other man as he has him, and makes the best of-him.
"Kim" was called by the Indians "Little friend of all the world," and that is the name that every Scout should Cam for himself.
5. A Scout is Courteous.
That is, he is polite to all-but especially to women and children, and old people and invalids, cripples, etc. And he must not take any reward for being helpful or courteous.
6. A Scout is a Friend to Animals.
He should save them as far as possible from pain, and should not kill any animal unnecessarily, for it is one of God's creatures.
Killing an animal for food or an animal which is harmful is allowable.
7. A Scout Obeys Orders of his Parents, Patrol Leader, or Scoutmaster without question.
Even if he gets an order he does not like he must do as soldiers and sailors do, and as he would do for his Captain in a football team, he must carry it out all the same because it is his duty; and after he has done it he can come and state any reasons against it : but he must carry out the order at once. That is discipline.
8. A Scout Smiles and Whistles under all Difficulties.
When he gets an order he should obey it cheerily and readily, not in a slow, hang-dog sort of way.
Scouts never grouse at hardships, nor whine at each other nor grumble when put out, but go on whistling and smiling.
When you just miss a train, or someone treads on your favourite corn−not that a Scout ought to have such things as corns −or under any annoying circumstances, you should force yourself to smile at once, and then whistle a tune, and you will be all right.
The punishment for swearing or using bad language is for each offence a mug of cold water to be poured down the offender's sleeve by the other Scouts. It was the punishment invented by the old British scout, Captain John Smith, three hundred years ago.
9. A Scout is Thrifty.
That is, he saves every penny he can, and puts it into the bank, so that he may have money to keep himself when out of work, and thus not make himself a burden to others ; or that he may have money to give away to others when they need it.
10. A Scout is Clean in Thought, Word and Deed.
That is, he looks down upon a silly youth who talks dirt, and he does not let himself give way to temptation either to talk it or to think, or to do anything dirty.
A Scout is clean-minded and manly.
Scout Promise
At the investiture you will have to make the Scout Promise in front of the rest of the Troop.
The Scout Promise is :−
"On my honour I promise that I will do my best−
To do my duty to God, and the Queen.
To help other people at all times.
To obey the Scout Law."
This is a very difficult promise to keep, but it is a most serious one and no boy is a Scout unless he does his best to keep his Promise. All promises are important things and should never be broken, but when you promise on your honour to do a thing you would rather die than break such a promise. So you see Scouting is not only fun provided for you, but it also requires a lot from you and I know I can trust you to do everything you possibly can to keep your Scout Promise.
Scout's Salute and Secret Signs
The three fingers held up (like the three points of a Scout's badge) is the Scout Salute and reminds a Scout of his three promises ,
1. To do his duty to God, and the Queen.
2. To help others,
3. To obey the Scout Law.
All wearers of the Scout badge salute each other once a day. The first to salute should be the first to see the other scout, irrespective of rank. Scouts will always salute as a token of respect, at the hoisting of the Union Flag ; at the playing of the National Anthem ; to the uncased National Colours ; to Scout Flags, when carried ceremonially ; and to all funerals.
On these occasions, if the Scouts are acting under orders, they obey the orders of the Scouter in charge as regards saluting or standing to the alert. If a Scout is not acting under orders he should salute independently. a all cases, Scouters if covered should salute.
The hand salute is only used when a Scout is not carrying his staff, and is always made with the right hand.
When carrying a stair the salute shown on page 217 is used for all occasions, and the Scout sign is made with the left hand. When in uniform a Scout salutes whether he is wearing a hat or not, with one exception, namely, at religious services, when all Scouts must stand at the alert, instead oil saluting.
Saluting when carrying a staff is done by bringing the left arm smartly across the body in a horizontal position, the fingers showing the Scout sign just touching the staff.
A man once told me that "he was an Englishman, and just as good as anybody else, and he was blowed if ever he would raise a finger to salute his so-called ' betters ' ; he wasn't going to be a slave and how-tow to them, not he ! " and so on.
That is a churlish spirit, which is very common among fellows who have not been brought up as Scouts.
I didn't argue with him, but I might have told him that he had got hold of the wrong idea about saluting.
A salute is merely a sign between men of standing. It is a privilege to be able to salute anyone.
In the old days the freemen of England were all allowed to carry weapons, and when one met another each would hold up his right hand to show that he had no weapon in it, and that they met as friends. So also when an armed man met a defenceless person or a lady.
Slaves or serfs were not allowed to carry weapons, and so had to slink past the freemen without making any sign.
Nowadays people do not carry weapons ; but those who would have been entitled to do so, such as knights, esquires, and men-at-arms, that is, anyone living on their own property or earning their own living, still go through the form of saluting each other by holding up their hand to their cap, or even taking it off.
" Wasters " are not entitled to salute, and so should slink by, as they generally do, without taking notice of the freemen or wage-earners.
To salute merely shows that you are a right sort of fellow and mean well to the others ; there is nothing slavish about it.
If a stranger makes the Scout's sign to you, you should acknowledge it at once by making the sign back to him, and then shake hands with the LEFT HAND. If he then shows his Scout's badge, or proves that he is a Scout, you must treat him as a brother-Scout, and help him in any way you can.
Investiture of Scouts
Suggested Ceremonial for a recruit to be invested as a Scout.
The Troop is formed in a horseshoe formation, with Scoutmaster and Assistant Scoutmaster in the gap.
The recruit with his Patrol Leader stands just inside the circle, opposite to the Scoutmaster. The Assistant Scoutmaster holds the staff and hat of the recruit. When ordered to come forward by the Scoutmaster, the Patrol Leader brings the recruit to the centre. The Scoutmaster then asks : "Do you know what honour is? "
The recruit replies : "Yes. It means that I can be trusted to be truthful and honest." (Or words to that effect.)
" Do you know the Scout Law? "−" Yes."
"'Can I trust you, on your honour, to do your best−
1. To do your duty to God, and the Queen?
2. To help other people at all times?
3. To obey the Scout Law?
Recruit then makes the Scout sign, and so do the whole Troop whilst he says :
" On my honour I promise that I will do my best−
To do my duty to God, and the Queen.
To help other people al all times.
To obey the Scout Law."
Scoutmaster : " I trust you, on your honour, to keep this promise. You are now one of the world-wide brotherhood of Scouts."
(If the boy has been a Cub, the wording should be, "You are now a Scout in the world-wide brotherhood.")
The, Assistant Scoutmaster then puts on his hat and gives him his staff.
The Scoutmaster shakes hands with him with the left hand.
The new Scout faces about and salutes the Troop.
The Troop salute.
The Scoutmaster gives the word, " To your Patrol, quick march."
The Troop shoulder staffs, and the new Scout and his Patrol Leader march back to their Patrol.
When taking this Promise the Scout will stand holding his right hand raised level with his shoulder, palm to the front, thumb resting on the nail of the little finger, and the other three fingers upright, pointing upwards. The rest of the Troop do this with their disengaged hands.
This is called "The Scout sign" and is only given at the making of the Promise. When raised to the forehead it is the " Salute."
SUGGESTIONS FOR PRACTICE
It is very important that the boy should understand the meaning of the Scout Law in accordance with his age. As he grows older, the boy will be able to see more of the meaning. So while the Patrol Leader, or another Scout, should teach the recruit the other Tenderfoot tests, the Scoutmaster should teach him the Law. Mere parrot-repetition is not enough.
From time to time practise the salutes.
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営 火 夜 話 その3
テ ス ト
テンダーフット ―― ロー ―― プロミス ―― 叙任(入隊式)
テンダーフットのテスト
スカウトになるには,前以つてテンダーフットのテストにパスしなければならない。これは簡単なテストで最低度の資格が示してあるもので,諸君はそれを征服したことを示せばよい。むずかしいものではない。わからないことは,本書で知ることができよう。
要求されている問題は次の通りである。
年令11才から18才までの者であること。
スカウト・ローとプロミスを知り,その意味を理解していること。(91頁,95頁を見よ)
各種敬礼法とその重要性を知ること。(95頁と杖の礼法(挿絵)373頁を見よ)サイン(96頁と109頁を見よ)
英国旗の構成を知り,取り付け方,掲揚法を知ること。(83頁を見よ)
傷の消毒法と包帯の作り方と巻き方。
次の結索が出来ること。
本給び,一重つぎ,巻結び,舫結び,ひとまきふた結び,縮め結び,並びに,その用途を知ること。(179頁を見よ)
ロープの端末の止め方。(181頁を見よ)
以上の全部が正しくできた時,スカウトマスターを満足させた時君は1人のスカウトに叙任され,上衣の釦穴とユニフォームのときはシャツの左腕に,スカウト章を付ける資格を得る。
スカウトの規則
世界中のスカウトは,丁度,黒と白とで印刷されたかのように(注:ハンコで押したように)多数の者を団結させるところの文字に書かれない規則をもつている。
この規則は昔から伝わつたものである。
次に記すものは,ボーイスカウトに適用される規則で,君が1人のスカウトとして入隊する時,服従するよう約束するものであるから,それについては全部を知らなければならない。
スカウトのモットーは
そなえよ つねに
で,君の心と身体とを,君がデューティを行なうために,いつでも役立つよう準備ずみの状態にしている,という意味である。
どんな命令にも服従するよう君自身を自制し,また,いつなんどき,起きるかも知れない色々の突発事件や事態に対しても,予め,充分考えて,心の用意をしておくこと。そうすれば,君は,その時に応じて,どうするのが正しいかを知り,待つてましたとばかり,それにあたることができる。
身体の用意とは身体を丈夫にし,時に応じた働きができるよう活動的にする。そして事にあたるのである。
スカウト・ロー
1 スカウトの名誉は信頼されることにある。
もしスカウトが「私の名誉にかけて,こうである」というならば,その言葉は最も厳粛な約束をしたのと同じ程度に扱われる。
同様にスカウターが,スカウトに対して「私は君が,これをすることを君の名誉にかけて信じる」といつたならば,そのスカウトは自分の能力の最善をつくして,その命令を実行する責任をおう。そしてそれを妨害するあらゆるものを排除する。
もしスカウトが,嘘をついて自分の名誉を破るならば,または名誉にかけてそうすることを信じられたのに,その命令を実行しなかつたならば,彼のスカウト章は取りはずすよう命令され,2度と再びつけられないだろう。即ち彼は,スカウトたることを,やめるよう指令されるであろう。
2 スカウトは,クイーンとその国,スカウター,両親,傭い主及 び目下(めした)の人々に忠誠である。
彼はそれらの敵や,これに対して悪口をいう者に対抗して,終始一貫,忠誠を励まねばならない。
3 スカウトのデューティとは,役立つことであり,他の人々を助けることである。
彼は何よりも先に,自分のデューティを行なう。たとえ自分の楽しみや慰安や安全を断念しても使命を行なう。二つの内どちらをすべきかに迷つた時自分に問う「どちらが自分のデューティなのか?」と。それは即ち「他の人々にとつて,どちらが最善なのか?」ということである。彼は人命を救つたり,負傷者を助けたりする準備を,どんな時にもしていなければならない。かつ毎日,誰かに対して最少限1つの善いおかえし(訳者注:善行)をするよう,最善の努力をしなければならない。
4 スカウトは,全てのものの友であり,他のスカウトたちの兄弟であり,その者の属する国と階級または教義の如何を問わない。
もし1人のスカウトが他のスカウトに会つたならば,たとえそれが未知の人であつても,その人に言葉をかけ,でき得る方法でその人の助けになることをする。それはその人が,これからする任務の実行についても,また,彼に食物を与えることでもよい。或いはその人の頼みに応じることでも,何でもよい。できる限りのことをしてあげなければならない。スカウトは決してデモ紳士(SNOB)であつてはならぬ。デモ紳士とは,自分より貧乏な人を見さげたり,または相手が金持だからという理由で,これをうらむ哀れな人のことである。スカウトは,人をありのままに受取る。そしてその人の最善の点を尊重する。
「キム」は,印度人から「みんなの,ちつちやいお友達」(“Little friend of all the world”と呼ばれた。これこそ全てのスカウトが皆から貰うべき愛称である。
5 スカウトは,懇切である。
即ちスカウトは全ての人々に,しとやかである。特に婦人や幼児及び老人,それに病弱者や不具者に対して,ものやさしい。
そして,してあげた援助や懇切に対しての返礼をうけてはならない。
6 スカウトは,動物の友である。
彼はできる限り動物の苦痛を助けねばならない。かつ,必要なく,どんな動物をも殺してはならない。それは神の生き物の一つであるからだ。しかし,食用にするための動物や有害の動物は,これを殺すことが許される。
7 スカウトは,その両親,パトロールリーダーまたは,スカウトマスターの命令に対し,すなおに服従する。
たとえ,いやな命令を与えられても,彼は兵士や海員のようにそれをしなければならない。フットボールのチームのキャプテンに対してするように,それはデューティであるが故に,しなければならない。それを果した後に,どんな反対の理由でも自分の意見を述べることができる。しかし,一且は実行しなければならない。それが秩序である。
8 スカウトは,全ての困難に際して微笑をうかべ口笛をふく。
命令をうけたら,快活かつ敏捷に,それに従わねばならない。ぐづぐづしたり,ねちねちしない。
スカウトは困難に対し決して不平をいわない。やり始めるにあたつて,お互いに泣きごとをいい合ったり,愚痴をこぼしたりしない。にこにこ笑って口笛を吹きながら,やりつづけるだけである。
汽車に乗りおくれたり,誰かが君の大切にしている小麦をふみつけたりした時――スカウトが小麦のようなものを持つ筈はないとしても――また,どんなつらい状態にあつても,即座に微笑をうかべ,それから口笛で1曲吹いて自分を元気づける。そうすれば,さつぱりする。
違反者に対する処罰として,罵り怒つたり,悪い言葉を用いる代りとして,コップ1ぱいの冷水を違反者の袖口から他のスカウトの手によつて注ぎ入れる。これは昔のスカウトのキャプテン・ジョン・スミスが,300年前発明した刑罰である。
9 スカウトは,倹約する。
即ち彼は,1ペニイずつためる。そして銀行に預ける。そうすれば失業した時,自分のお金があるから他人に借りなくてすむ。または他の人々が必要とするとき,与えるお金を持つていることになる。
10 スカウトは,思考,言葉並びに行為においで清純である。
即ち・彼は卑猥な話をする馬鹿な青年を見さげる。そして,きたない談話や思考えの誘惑におちいらない。また,けがらわしい,どんなこともしない。スカウトは,きれいな心をもち,そして男らしいものである。
スカウトのプロミス
叙任式(入隊式のこと)の時,君は,ツループの,みんなの前でスカウトのプロミス(約束――ちかい)をしなければならない。スカウトのプロミスは――
「私は名誉にかけて
ゴッドとクイーンに対する私のデューティを行なうため
いつも,他の人々を援けるため
スカウトローに従うため
私のベストを尽すことを約束します」
これは,誠にむずかしい約束である。だが,一番真剣なものでプロミスを守ることに最善を尽さないならばスカウトにはなれない。プロミスの全ては,どれも重要で決して破つてはならないものであるが,名誉にかけて約束した以上,これを破る位ならむしろ死んだ方がましだと考えるだろう。故にスカウティングというものは,面白きを与えるだけではなく,君等に一つの運命を要求しているものだということを知るだろう。私は君たちがスカウトプロミスを守るためできる限りの努力をするものと確信する。
スカウトの敬礼法と秘密のサイン
3本の指を(スカウトのバッジの3つの尖端のように)立てたのが,スカウトの敬礼であつて,かつそれは3カ条のスカウトプロミスを表わしている。すなわち――
1 ゴッドとクイーンに対する私のデューティを行なうため
2 いつも他の人々を援けるため
3 スカウトローに従うため
の3カ条をあらわすものである。
スカウト章をつけている者は,すべて1日1回は相互に敬礼する。
最初に相手のスカウトを見つけた者が先に敬礼するので,階級に関係はない。スカウトは,いつも敬愛の記号として敬礼するであろう。国旗掲揚の時に,国歌奏楽の時に,外装を取りはずした軍旗に,儀式の場合のスカウト旗に,並びに全て葬送に際して行なう。
もしスカウトたちが,命令によつて作業中であれば,指揮をとつているスカウターの号令によつて敬礼または「気をつけ」をする。命令下でない作業中の時は各個に敬礼せねばならない。スカウターは,着帽の時,敬礼する。(訳者注,英国のスカウターは左手に杖をもち右手で挙手の敬礼をする)
スカウトは,杖をもたない時だけ,挙手の敬礼をする。これは常に右手である。
杖を持つている時の敬礼は挿し絵(杖の礼法373頁)に示しているようにする。これは左手でスカウトサインをするのである。ユニフォームを着ている時は着帽の時も,着帽しない時も,敬礼する。
ただし一つ例外がある。それは宗教礼拝の場合で.スカウト全員は敬礼の代りに起立し,気をつけをせねばならぬ。
杖を持つている時の敬礼は,左手を上体の前方にスマートに水平にあげ,その指はスカウトサインをして杖に触れさせるのである。
かつて,或る人がこんなことをいった。「彼はイギリス人なのだ。皆と同じように立派なイギリス人なのだ。それなのに,もし彼が「上役」と呼ばれる人に,1本指で敬礼したとするならば,彼は自分を卑下することになるだろう。彼は奴隷になろうと思つていないし,また支那式に叩頭して,おついしようをする気もない。断然!」といつた。
こんな文句は,とるに足りない文句である。スカウトとして育てられなかつた人々の間に共通する文句である。
私は,その人と議論するつもりはない。けれども私は,彼が礼法について誤つた考え方に捕われている点を告げねばなるまい。礼法とは,品位ある人々の間での単なる合図である。誰にとつても敬礼できることは結構である。
昔,イングランドの自由人は,武器を携行することを許されていた。そして人に出会つた時,お互いに右手をあげて武器を用いないという意思を示した。そのことは彼等が味方であり,友人であることになる。これは,武装した人が婦人や無防禦の人に会う時にもそうしたものである。
奴隷や農奴は武器の携行を許されなかつた。それで自由人に会うと何の合図もせず,こそこそ通りすぎなければならなかつた。
今日では人々は武器をもたない。しかし昔ならば携行する資格のありそうな人,例えばナイト(騎士)貴族,それに兵士,自分の所領で生活している人のように,または自分等の生命で稼いでいる人々は,今尚,帽子に挙手するか或いは脱帽して敬礼するという形を行なつている。
「やくざ者」は敬礼する資格がない。それでいつも彼等がするように,こそこそと通りすぎねばならない。自由人や給料とりの注意をひかないように。
敬礼することは,君が正しい人間だということを示す。そして相手に善意をあらわす。故に奴隷的の意味はないのである。
もし未知の人が君にスカウトサインをしたならば,君はその人に対して即座にサインをして返すべきものと思つてほしい。そして左手で握手する。もし彼がスカウト章か或いはスカウトであることを証明するものを示したなら,君は彼を兄弟スカウトとして取扱い,できる限りの方法で援助をしなければならない。
スカウト叙任(入隊式)
仮入隊者が,スカウトに叙任される儀式の示唆。
ツループは馬蹄形にならび,スカウトマスターとアシスタント・スカウトマスター(副長のこと)は馬蹄形の割れ目に立つ。
仮入隊者は,彼のパトロールリーダーと共に円の内側にスカウトマスターに向つて立つ。アッシスタント・スカウトマスターは,仮入隊者の杖と帽子とを持つている。スカウトマスターが前進を命ずるとパトロールリーダーは仮人隊者を同伴してスカウトマスターの面前に進む。スカウトマスターは,「君は,名誉とはどんなものか知つていますか?」と,たずねる。
仮入隊者は「はい,知つています。それは私が誠実で正直者だと信頼されることを意味します」(或いは,そういう効果のある他の言葉で答える)
「君は,スカウト・ローを知つていますか?」
「はい」
「私は君が,名誉にかけて
1 ゴッドとクイーンに君のデューティを行なうため
2 いつも他の人々を援けるため
3 スカウトローに従うため
君のベストを尽す,と信じてよいですか?」
仮入隊者は,スカウトサインをしてプロミスをとなえる。この間,ツループの全員もまたスカウトサインをする。
「私は名誉にかけて
ゴッドとクイーンに対する私のデューティを行なうため
いつも他の人々を授けるため
スカウト・ローに従うため
私のベストを尽することを約束します」と。
スカウトマスター「私は,君の名誉にかけて,君がこのプロミスを守るものと信じます。君は,今やスカウト世界兄弟の一員であります」
(もし,カブから上進した者であるならば,文句は「君は今や,スカウトになり,世界兄弟の一人であります」)
(訳者注イギリスでは,カブはスカウトではないので今始めてスカウト になつたわけ)
アシスタント・スカウトマスターは,彼にハット(帽子)をかぶらせ,杖を与える。
スカウトマスターは,左手で新入隊者と握手する。
新入隊者は,ツループに面して敬礼する。
ツループ全員,答礼する。
スカウトマスターは,「君のパトロールにいそいで行きなさい」と声をかける。
ツループは,杖を肩にになう。新スカウトと彼のパトロールリーダーは,自分のパトロールに戻る。
このプロミスをする間,約束するスカウトは右手を肩の高さと水平にあげ,掌を前にし,栂指は小指の爪の上を押え,他の三指は上方に伸ばして立てる。ツループの者も,これを,あいている方の手でする(訳者注杖をもつているならば左手があいているから左手で行なう)
これを「スカウト・サイン」とよぶ。これはプロミスする時だけに用いる。前額部にあてれば「敬礼」になる。
(訳者注 英国では,ちかいの時だけ,この型のスカウトサインを行ないその他の場合のスカウトサインは腕のあげ方に定めなく自由である)
実施上の示唆
少年が,その年令に相応して,スカウト・ローの意味を理解することが大切である。年をとるに従つて,意味を,もつと深く知るようになろう。それ故に,パトロールリーダーや他のスカウトたちは,テンダーフットの他の科目を仮人隊者に教えることにし,ローを教えるのは,スカウトマスターの役目とすること。ただ,おおむがえしに暗記するだけでは充分とはいえない。
ひまさえあれば敬礼法を練習すること。
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⚜ ⚜ ⚜
参考までに、戦前の少年団日本聯盟が定めた 宣誓 と おきて についての解説文を載せます。大正15年発行の「少年団日本聯盟諸規程 大正15年版」からの引用です。旧字体の漢字は新字体に置き換えてあります。
(なお、昭和8年 少年団日本聯盟需品部発行 二荒芳徳著「少年団健児教本:稿本 序巻(宣誓・「おきて」義解篇)」に、更に詳しい記述があります。)
宣 誓 義 解
私は神聖なる信仰に基き名誉にかけて次の三条を誓ひます。(宣誓前文)
抑々宣誓とは誰に対してなすものであるか。
これを相互に相誓ふものとなす説も立ちうるが又一つの超越存在即ち神に対してなすものであるとの説も立ちうる。
然るに本連盟はかねてから草案としての宣誓の実効について論議した結果、今日その決定に於ては明に前に起るべき疑問に解釈を与へたのである。
凡て人には信仰(信念)が必要である。今日の教育に於てはこの信仰涵養の方向を頗る軽視してゐる。否、もし率直に云へば信仰を無視してゐる。神社崇敬の声、徒らに高くして「神」の本質については多くの人が明白なる説明をなし得ないのである。
我が少年団の大精神運動は一面に各学校教育の趣旨をあくまで尊重して、之の徹底を期すると共に他の一面に於て此信仰の涵養については機を捉え、時を利して力を竭してゐるのである。此の「神聖なる信仰」とは即ち各人の内心に潜在している所の「神性」を指してゐる。而して、その各自内心の「神性」なるものゝ覚認あってこそ「神明を尊び皇室を敬ひます」を初め三ヶ条の宣誓が自己の良心から為し得られるのである。もし、この「神聖なる信仰」なき時は「神明を尊び」と云ふるも「皇室を敬ひます」と云ふもこれは偶然なる自己の誓の域を脱し得ない事となり、従って、その誓は自己の他人に対する誓、又は自己と対立した神即ち偶像的神に対する誓の域を脱し得ない事となるのである。自己の内心に「神性」を認め、而してこの「神性」の普遍性を覚認し、茲に初めて絶対荘厳なる「神明」が観得せられるのである。
右の前提に基き、既に宣誓者は自己の内心に「神」を認め得た。その当然の結果として、自己が偶然なる自己に非ずして、弥栄ゆる大生命を表現せる尊貴な自己である事を反省し来つた所に初めてその「名誉」てふ外面的の自尊心が湧き出て来るのである。蓋し「名誉」を重ずると云ふ事は自己の特独不羈なる存在の認識を以て初めて首肯せらるべき事であるからである。
而してこの「神聖なる信仰」は実に人としての最小限度の信仰であって、又同時に深慮熟考した所の文明国民の持つべき信仰であるが、而も此の種の信仰は真面目なる我々の古より不言不語の間に体得し来つた所のものであって、敢て説明を加え得ず、議論を加え得ざる究極至高の信念である。而して其の各人に普遍なる「神聖なる信仰」は或は現はれて仏教の帰依者となり、或は現はれて耶蘇の教徒となり、或は現はれて儒教の求道者となった。これ皆お互に我々が謂はゆる「三つ児の魂」としてその開闢の昔より持ってゐた所の国家を弥栄に栄えしめんとする最も雄大なる理想信念より来るものである。
即ち約言すれば「神聖なる信仰に基き」の語は宣誓の内面的要素であり、「名誉にかけて」の語は宣誓の外面的要素であると謂い得る。
一、神明を尊び、皇室を敬ひます。
茲に「神明」と云ふは「万物を主宰する超越的存在」を指すのである。
日本語の「加美」仏教の「仏陀」、耶蘇教の「ゴッド」儒教の「天」等孰れもこの「神明」の語に内包されてゐるのである。既成宗教の意義する各宗の超越的存在の内容はその深浅広狭に於て各種あるであらうが、茲には人類がその真面目な内心の欲求から「認めざらんとしても認めざるを得ない超越的存在」を指したのである。
「皇室」を敬う事に日本人として説明するにはあまり明かな事である。而もこれを茲に明記する所以は健児はその一呼一吸、造次顚沛皇室を敬う事を忘れざるを意味するのであって、この点については別稿に詳説する事とする。
一、人の為、世の為、国の為に尽します。
「人」は各個人を意味し、その中には兄弟たる健児と、一般の他人との二種がある。「世」の語には環境と国体との二つの意味がある。自己が環境又は国体を構成する一人であると自覚する時、その一挙一動は環境全体又は国体全体を動かす事、尚誰某が頭を動かせば誰某が動いた事になると同じである。斯くして各人は日本人としても將又世界人としても日本国又は世界を動かしてゐるのである。人として又同時に日本人たる事よりして、吾人は日本のために尽し又世界の為に尽してゐるのである。そうして実はこれが自己のためでもあるのである。
然し漫然たる「世界」は実在せざる事、尚、漫然として「馬」が実在せざるが如くである。「馬」なる観念は現実には必ず特定の馬即ち黒馬、白馬、肥馬、痩馬、と云ふやうに存在するのである。総ての毛色、総ての形態を観念せずして「馬」なるものは抽象して存在せぬのである。「人」にしても亦同じである。因って最後に「国の為」に尽しますと云ふ語を置き、人の為に尽し、世の為に尽すも、これ等は皆又国の為に尽す事と離れぬ事を意味し、同時に自国をこそ先ず弥栄に栄えしめて、世界の国々の模範国としやうと云ふ努力即ち、健児が自ら身を修めて世の先覚者とならうとするのと異らない意気込を示したのである。
一、少年団のおきてを守ります。
「おきて」は掟と云ふ字を古来使って来てゐたが、今回はわざと仮名にして書き表はした。蓋し、この語は純然たる国語であって、余程面白い意味を持ってゐると思ふ。
「おきて」とは一説に「置きつる所」(言海。大槻博士説)の意なるとの事であるが、余は「置き所」と云ふ意であると云ふ説である。「行くて、遥に見渡せば」と云ふ語が、「行く所を遠く見渡せば」と云ふ意であるが如く、「て」と云ふ語は「所」「方向」と云ふやうな意である。「おきて」は「置き所」「置く方向」の意であると解せられる。即ち「心の置き所」「心の置くべき方向」の意である。果してさうすれば、実にこの語は、意味深長である。健児の「心の置き所」を定めてものである即ち常住坐臥の心の持ち方を定めたものである。夫れ故、殊更に国字の「掟」の字を採らずに仮名で「おきて」として「置き所」の意を明にしたのである。
以上は少年団の宣誓の哲学的意義である。これを解釈布桁して、よく健児をして己の意を知らしむるは指導者の任である。
人、或は少年団の宣誓としてはその深遠幽玄なるを難するものがあるかも知れぬ。けれども、少年団の宣誓は只に少年を相手とするものに留らず、世界の先覚の信条として耻しからぬものでなければならぬ。その説くの法、或は幼年に、少年に、乃至は青年によって異るべきは当然である。此の点よく考慮を加へて聖にして雄なる吾人の目的を達成せん事を敢て同人盟結の士に希望する。
「おきて」の字をもし従来用ひられて来た、団規、団則、規則、規約等の字に比べる時には、これ等が何となく威厳がましく、強制がましく響くに反し、「心の置きて」と云ふ意は何と自律的な潤ひと温みのある字であらうかは直に感ぜられる所であらう。(二荒芳徳述)
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「 お き て 」 義 解
抑々「おきて」は「心の置き所」を示したものである。規約、規則と云ふが如き語と比べて、遥に自律的、自覚的である。即ち自己の真面目な心持を益々真面目に鍛へつゝ、正しい所に置かんとする努力、精進を意味する心の用意を描き出したものである。
以下「おきて」の各条を説明する。
一、健児は忠孝を励む。
健児は宣誓によって、皇室を敬う事を誓った。「おきて」が心の向け方、置き所を定める以上先づ第一条に「忠孝を励む」ことを特筆すべきは当然である。
抑々日本は忠を本とした国柄であって、忠こそ百行の本たるべき国である。天皇は日本の古語でスメラミコトと申し上げてゐる。この語の意を解剖して見ると、スメラは美しきを稱へ奉つる形容詞である。なほスメラミクニ、スメラギミのスメラと同じ意義である。ミコトはマコトの意でありマとミとは相通ずるによりてスメラミコトとは「美しく尊さ比ひなき真事(マコト)」と云ふ意味である。
抑々マコトとは真実のことわり、道理、と云ふ意で支那字では「誠」の一字を以てマコトの字に当てゐるが、日本のマコトと云ふ意は「誠」の字の表はすより、遥に雄大なる意をもっている。もしマコトなる日本の固有語の有したる意義を漢字又は現代語で表はせば「誠」「真理」「事実」「偽りのなき事」「正しき事」等の意味を包含してゐるのである。
即ち日本天皇は在らゆる「誠」「真理」「事実」「偽りのなき事」「正しき事」を履み行ひ給ふべき御方であらせられる事を意味し、且つこれを履み行ひたまふためには日本臣民、全体の翼賛を前提として御存在遊ばされる御方との意である。これは固より民族思想の根本を探求し、日本古典の研究によって初めて明に知られるのであって、茲にはわざと詳説を避ける。只、日本天皇の御本質が如何に「真理(マコト)」「真事実(マコト)」と云ふものを御尊みになりこれを御体現遊ばさるゝべきを理想とせられ、而も御歴代の天皇陛下がひたすら、この雄大莊厳なる御天職を御実践遊ばされたかを我々は深く、遠く心の底に刻み込まなければならぬ。
右の民族理想に心を潜める時、日本国は忠を本として建てられた国である。然しこの「忠」なる意義は、字こそ支那字の「忠」を借りて来てゐるが決して支那の「忠」の如く「孝」と対立した所の「忠」ではなく「孝」を統括する所の「忠」である。否な孝、仁、義、体、智、信等あらゆる徳目を統括する「忠」である。即ち我国では忠は百行の本なりと云ふ思想である。
かく天皇を見上げ奉る時に我々日本臣民は弥やが上にも天皇をマコトの表現者たらせ給ふべく、不断の向上努力をせねばならぬ。そうしてこれが自己の念願、………やがては欲求になって来る時、何等自他の区別なく、天皇の御心に歸一し奉つるのである。蓋し国に尽すとか世のために働くとか云ふ事は、義務とか責任とかの程度を越えて自己内心の已むに已まれぬ欲求となってこそ真の愛国者と云へるのである。この不断の努力を客観視すれば即ち「いやさか」の精神であるそうして「いやさか」の心持は三種の神器によって表現されてゐる。
以上は専ら冷静なる国民の理想信念の方面より「忠」の意を明にしたのであるがこの外に日本臣民と皇室との関係は義に於て君臣であるが、情に於ては親子である方面を忘れてはならぬ。第一条に「忠」と「孝」とを相連らねたのは天皇に対し奉って「忠」を、親に対して「孝」を励むのであると解するより、「忠」は一面に臣子の情としての皇室に対する心持と、個人自らが親に対する所謂「孝」の心持との二つを意味するものと解するが正しいと思ふ。
「励む」の語を用ひたのは弥やが上にも弥や進んで忠孝の行を実践するの意気込である。
二、健児は公明正大、名節を生命とする。
第一条には健児の世に生きんとする大信条を定めたに対し第二条第三条は自警を意味してゐる。この行為は公明正大であって卑怯未練の振舞のない事、日月とその明を競はんとするが如き、威厳のある態度、かの孟子の云ふが如く富貴も淫すること能わず、貧賤も移すこと能わず、威武も屈すること能わざるが如き軒昴たる意気を表はした態度である。小策を弄したり、愚痴を滾したり、陰口をきくなどは最大の屈辱と考ふべき廉耻心のある態度である。
「名節を生命とする」とは一死にかけても己が節操を厳守し、利を逐ふて走るが如き事や、阿諛迎合等を屑しとせぬ心持である。節操と生命を孰れが重きと云はれゝば生命を棄てゝも節操をとると云ふ意気込である。
三、健児は有為、世を益することを務とする。
「有為」とは備え常にあるの意で何事でも全益の事は自ら進んで為し、又不義不正に対しては敢然とその真相を看破してこれを弥栄の精神で美化、浄化して行くの意である。茲に最も注意を要するのは、不義不正を蛇蝎視して、自ら独り清しとなすはいまだ、「有為」と云ふ可きでない。その不義不正にも闊達清澄な自己の心境を以て対し却ってこれを活用し、善導して世を弥や栄えに栄えしむる様利用する事が即ち世を益することになるのである。そうして健児はこの弥栄の心持を以て世を益する事が自己の任務、本分とするのである。
四、健児は互に兄弟、総ての人を友とする。
本条と第五条第六条第七条とは健児の人に対する態度を規定したものである。
先づ「健児はお互に兄弟である」と云ふ事は同じ心持を抱いてゐる一心同体のものであると云ふ意である。仮令、同じ親から生れずとも、同じ精神で結んだものであるから兄弟と云ひ得るのである。従って健児はその仲間に失敗や、悪い事があっても皆が寄って、たかってこれを善いやうに導き、後の始末をつけてその兄弟をして過失のないやうにする事が最大切なのである。人には「なくて七癖」と云って癖があるから、この癖を寛容して且つ直して行く襟度がなくてはならぬ。
次に「総ての人を友とする。」人は哲学的に云へば同じ大生命より流れ出た「生命その者」であると云ふ事が正しい見解であると思ふ。甲と乙と婚して丙なる子を生むと云ふ事は実は大生命の存在を前提して初めて首肯さるべき事である。お互は神(造物者)の御子なるが故に、………換言すれば同じ根源より出でたものであるが故に………即ち同じ大生命より発して、個々に別れたものであるが故に、お互に懐しい或情を有し、同情の念を起し得るのである。この感情を益々純化して行く處に「総ての人を友とする」の感が当然に出てくるのである。
「総ての人が友である」と云はずして「友とする」と云ったのは只「友である」と云ふ観念でなく「友として」の愛情を尽すの意である。「友である」と云へば悪人も亦「友である」と云ふ事になって、事実を静的に観る感があるが、「友とする」と云ふ以上悪人に対しても、人情を以て少しも敵視せずして相愛して、彼の善人たるべきやうに尽して行く事となるのである。
五、健児は常に親切、動植物を愛する。
健児は「常に」親切でなければならぬ。人は誰しも時に親切であり得る。しかし健児は「常に」即ち何時でも親切であらねばならぬ。前条の兄弟の心持、友人たるの心持を自らの内心に深めて行けば行く程、その親切は「常に」でなければならぬ。時に親切であり、時に優しい感情を持つだけでは健児としては足らぬのである。
なほ、この「常に」が本条にのみあって、他の条項にないのは「親切」と云ふのは一つ一つの行為であるからである。此に反して「忠孝」、「公明正大」、「有為」、「兄弟」等は孰れも心持の方が主観して規定したので、常にと云ふが如き形容詞を要しないのである。
六、健児は長上に信頼し、団各長に服従する。
「信頼」と云ふ語は時に世間では「疑はない」と云ふが如き意に解する事もあるが、茲では勿論心から、頼り信じて行く意である。自分の腑に落ちぬ所あれば遠慮なく、禮を以てこれを質し、常に信頼を深めて行くと共に、少しも心に結ばれのないやうにして行く事が大切である。世に疑心暗鬼を生ずると云ふが、只心の中で考へて推察して不信頼する心を蔵してゐるが如きは実に男らしくもなく、健児としても耻かしい事である。殊に少年団の事務を執り、又経営に当る時は意見の相違や主張の不一致より、心平かならざる場合も多くあるべきであるが、これに対して公明正大に振舞ひ、よく長上の決定に服する事は常に心掛けて行かなければならぬ所である。
「団各長」とは各人の属する団の各長即ち、総裁、総長、団長、隊長、副長、等を意味し、訓練所に入所中はその所長以下の指導者を指すのである。
「服従」するとは夫れ等の人々と一心同体になって信服して心から従ふ意である。少年団の集りは必ず一心同体の信念を基調とすべきであるが故に服従は当然に外部より見れば絶対でなければならぬ。併しその当事者相互の心的状態は実は融け合った只一心の存在が感ぜられる計りである。これが外形的の服従と甚しく異なる所である。弥栄の一心こそこの「服従」の一語を餘薀なく解釈し尽すものである。餘蘊余蘊
七、健児は快活、笑って困難に当る。
「快活」とは平生の態度が常に元気の溢れてゐて、活々してゐる事を云ふ。ポケットに手を入れたり、寒さうな形をして腰を曲げて歩くなども又暑さうなだらけた形をしてゐるのも健児の姿勢ではない。
寒い、暑いを口にする事や、愚痴を並べ不平を云ふが如きも「快活」とは正反対の「因循姑息」と云ふものである。
「笑って困難に当る」とは困難に会っても顔色も変へず、綽々として余裕のある事である。周章狼狽などと云ふ事も「困難」が来た時に「備なき」より来る一精神状態である。「笑って」の一語は味へば味ふ程妙味がある語で「憂き事のなほこの上に積もれかし、限ある身の力ためさむ」と云ふ意気である。只一言すべきはニヤニヤ笑ひや、厳粛にすべき時の慚かし気な笑は健児が厳禁すべき所である。
八、健児は恭謙、礼儀正しい。
健児は皆心の富んだ、裕(ひろ)々した心の持主でなければならぬ。物質的富の有無に拘らず、精神的には富める者であるとの自尊がなければならぬ。この自覚あってこそ、仮令、身は陋巷に在っても堂々、王公貴人とも交はり得るのである。従って据傲は健児に許され得ない悪徳である。非礼は最も糺弾さるべき悪徳である。健児は現代の「さむらひ」である。この雄々しい、華々しい健児の生活にこの一条の実践は外部の人々をして健児精神を一番速に会得せしむべきものである。電車、汽車の中でも、街路上でも、健児が先づ批評されるのはこの一条の表はれ如何による。
九、健児は勤倹質素である。
健児は「低く生活して高く思考する人」でなければならぬ。簡易に生活し少しでも心の余裕を作って人を益し、世の為めを計らなければならぬ。
日本の今日は甚残念であるが、人々の物質欲が甚しく大きすぎる。外見を飾り過ぎる。人の批評を気にし過ぎる。人から物質上の貧者と見られはすまいかと云ふ事を気にしてゐる人々が多い。一言にして蔽へば自己の尊貴を忘れて、大勢の渦巻に弄ばれてゐる。何と云ふ屈辱であらう。健児は断じてこの潮流を轉向せしめなければならぬ。更に繰り返す。健児は現代の「さむらひ」である。目前に見るあの軽佻華美な風潮に対し毅然たる態度を以て戦ふの堅志がなければならぬ。
尚一言すべきは、「見掛けがよいから」とか又は「安価であるから」木綿より絹物を選ぶと云ふやうな心境は健児精神として恥づべき事である。「見掛け」を棄てゝ「実用」をとれ。「安価にのみ」心を労する代りに「足るを知れ」。これが本条の最強く高唱する所である。
十、健児は心身共に清い。
この一条はおきての結句である。前九ヶ条を体得し来り、更に自己が自己に命ずるに「心身共に清い」の一条を以てする。過激な空想や、突飛な夢想や、は心を汚すものである。酒色に溺るゝ青年を見る時、健児は彼等の身体の清からざるを憫まなければならぬ。清い健児の瞳を開いて世相を凝視する時、我が心身の清さは如何にこの世に誇るべき自己なるかを知るであらう。
第八条以下「礼儀正しい」と云ひ、「勤倹質素である」と云ひ、「心身共に清い」と云ふ。孰れも自己に対する、自己の断定である。この堅志と決心とを持たざる時、健児としての自己は存在せぬのである。「健児が恭謙で礼儀正しくする」のではない。「健児が勤倹質素にする」のではない。「健児が、心身共に清くする」のではない。礼儀正しい。故に健児なのである。「勤倹質素である」故に健児なのである。「心身共に清い」から健児なのである。此れ等の徳目なくば名は健児と云ふも健児の本質はないとの意である。
以上は「おきて」の根本的説明である。
惟ふに「おきて」の意味する所は頗る広汎で到底詳しきに亘って釈義する事は困難であるから、大体を此處に説明するに留めた。(二荒芳徳述)
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参考までに
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<https://dl.ndl.go.jp/pid/9580322/1/1>
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<http://bpsa-us.org/wp-content/uploads/2013/06/1938_POR.pdf>
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<http://www.scouting.org/scoutsource/venturing/about/welcome.aspx>
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「ボーイスカウト ポケットブック」 S46版 (やんちゃ隊の資料庫 ウェブサイト)
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"Johnny" Walker's Scouting Milestones Pages, UK
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世界各国の連盟ウェブサイトへのリンクページ (世界スカウト機構ウェブサイト)
<http://www.scout.org/nso>
戦前に発行された関連の書籍が国立国会図書館のデジタル化資料で閲覧できます。
少年団教範:スカウテイング・フオア・ボーイス 少年団日本聯盟訳 大正14 更新出版社発行
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青年健児教範(ローバーリング ツウ サクセス) 少年団日本聯盟訳 大正15 少年団日本聯盟需品部発行
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幼年健児教範(ウルフッカブス・ハンドブック) 少年団日本聯盟訳 昭和2 少年団日本聯盟需品部発行
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少年団参考資料 三島章道,片岡重助講演 大正13 福徳生命保険発行
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ボーイスカウト訓練の大綱(少年団日本聯盟パンフレツト;第6輯) 中野忠八著 大正14 少年団日本聯盟発行
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少年団日本聯盟諸規程 大正15年版 寺岡一義編 大正15 少年団日本聯盟発行
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少年団日本聯盟事業概要 昭和7年版 少年団日本聯盟編 昭和7 少年団日本聯盟発行
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少年団健児教本:稿本 序巻(宣誓・「おきて」義解篇) 二荒芳徳著 昭和8 少年団日本聯盟需品部発行
<https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000000623561-00>
第六十五回帝国議会に現れたる少年団問題 少年団日本聯盟編 昭和9 [少年団日本聯盟]発行
<https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000000761637-00>
少年団日本聯盟諸規程 昭和10年度版 少年団日本聯盟編 昭和10 少年団日本聯盟発行
<https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000000758622-00>
少年団健児教本:稿本 将来の健児教育法教範としての提唱 第1巻(公民篇)2版 昭和11 大日本少年団聯盟
<https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000000618019-00>
少年団指針 東京少年団編 大正5 大日本義勇青年社発行
<https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000000557532-00>
少年団運動の成立と展開に関する研究 田中治彦氏の学位論文(博士,教育学)九州大学,1996
<https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000001-I000000304366-00>
私のB-Pスピリット研究
@ ボーイスカウト運動についての諸考察 (2014.10.5)
A スカウティングに託されたB-Pスピリット (2019.8.27)
B 「隊長の手引」に記されたB-Pスピリット (2015.8.14)
C ローバーリング ツウ サクセス に記されたB-Pスピリット (2015.8.15)
D 「パトロール システム」に記されたフィリップスのスピリット (2015.9.26)
E 進歩制度に託されたB-Pスピリット (2015.10.14)
F 信仰の奨励に託されたB-Pスピリット (2015.10.12)
G 野外活動に託されたB-Pスピリット (2015.11.29)
H スカウト運動に託したB-Pスピリット (2016.7.14)
I “ちかい”と“おきて”に託したB-Pスピリット (2016.12.12)
◎ ベーデン-パウエルのラストメッセージ B-P's Last Message
J ボーイスカウト研究 (1979.12.14)
K ボーイスカウト実践記 (1980.4.28)
L ボーイスカウト活動プログラムの紹介 (1998.6.20)
M 《資料》 スカウティング フォア ボーイズ 序文(1940年)
N 《資料》B-Pの1926年の講演「ボーイスカウト・ガールガイド運動における宗教」
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